Screenshot 2022-11-17 08.01.53シャープ 社長執行役員兼CEOの呉柏勲氏は11月16日、社内イントラネットを通じて、CEOメッセージを発信した。
11月4日に発表した2022年度第2四半期(2022年7~9月)決算が赤字になったこと、通期業績見通しでは利益目標を下方修正したことなどに触れ、「修正公表値の必達と将来の反転攻勢に向けて」と題して、成長軌道への回帰に向けた強化策などを示してみせた。

 最初に呉社長兼CEOは、上期決算を振り返り、「上期は、米州およびASEANにおけるブランド事業の伸長や、車載向けディスプレイの販売拡大などにより、売上高は前年同期を上回ったが、急速な円安の進展によるブランド事業の収益減少、ディスプレイ市況の悪化によるSDP(堺ディスプレイプロダクト)の業績低迷などにより、利益は大幅減益となった。とくに、第2四半期だけを見ると、新型コロナウイルスで世界が大きく混乱した2019年度第4四半期以来の赤字となった。また、通期業績予想の見直しもあわせて公表した」と報告。

 「下期は『開源節流』を一層徹底することで、現在の悪い流れを早期に断ち切り、何としても年間で最終黒字を達成したい」と語り、「短期的な業績改善には『節流』が最も効果的である。現在、さまざまな観点からコスト構造の見直しや不採算事業の構造改革、人員適正化などを進めており、こうした施策を着実に成果につなげるとともに、各ビジネスユニットや生産会社、販売会社が一致団結して、さらなる改革に取り組んでほしい」と述べた。





 呉社長兼CEOは、毎月発信しているCEOメッセージのなかでは、必ずといっていいほど、開源節流という言葉を活用している。開源節流は、健全な財政を、川の流れに例え、「開源」は水源の開発を意味することになぞらえ、新たな事業を創出し売上げを伸ばすこと、「節流」は水の流れる量をしっかりと調節する意味から、無駄を撲滅することを指している。

 呉社長兼CEOは、「修正公表値の必達に向け、各経営幹部がより強い決心を持ち、先頭に立って困難に立ち向かっていく。社員のさらなる奮起を期待している。全員の力で、早期の業績回復を実現していこう」とした。

 なお、SDPについては、「当面厳しい状況が継続する見通しだが、足元ではパネル価格に好転の兆しが見えつつある。今後はSDTC(シャープディスプレイテクノロジー)との緊密な連携のもと、中長期でさらなる需要増が期待される車載向けをはじめとした中型パネル事業の拡大や、新たな産業分野での新規事業の創出に、スピードをあげて取り組む。これにより、着実に業績改善を進め、2023年度の早いタイミングで、ディスプレイデバイスセグメント全体で黒字化を成し遂げたい」と意欲をみせた。

シャープには世の中を変える可能性を秘めた技術やアイデアがまだ眠っている

 今回のCEOメッセージでは、成長軌道への回帰に向けて、「販売マーケティングの強化」「研究開発の強化」に取り組む考えを示した。

 「シャープが2023年度以降、再び成長軌道へと歩みを進めていくためには、スマイルカーブの川上と川下である『研究開発』と『販売マーケティング』に集中的にリソースを投入していくことが重要である。一方、中間にあたる『製造』においては、グローバルサプライチェーンを有効に活用し、より競争力のある体制を構築していきたい」とした。

 「販売マーケティングの強化」については、ブランド事業において、海外での事業拡大と国内事業の高付加価値化に取り組む一方で、上期には米州やASEANで成果をあげたものの、世界的な景気減速によって、各地で需要が後退し、事業環境が厳しさを増していることを指摘。

 「事業拡大を実現するには、市場動向や競争環境をきめ細かく分析し、スピード感を持って、新たな打ち手に挑戦していくことが重要である」と語り、ASEANでは、11月10日から約1週間、各国の市場動向や販売状況、今後の開発計画などについて重点的に議論を重ねたことを報告。欧州では、テレビ事業やパソコン事業の構造改革に着手し、早期に適切な収益を確保できる体制を構築していく考えを示した。また、デバイス事業では、市場拡大が期待される車載やAR/VRなどを中心に、One SHARPによる営業活動を展開することを示した。

 「研究開発の強化」では、CEATEC AWARD 2022において、屋内光発電デバイス「LC-LH」が経済産業大臣賞を受賞したことに触れ、「LC-LHは、屋内光を電気に高効率で変換できる色素増感太陽電池と、シャープが長年培ってきた液晶ディスプレイ技術を融合させたシャープらしいデバイスであり、腕時計や電卓などに用いられる一般的な太陽電池に比べて、約2倍の発電効率を持つ。今後、さまざまな小型デバイスやセンサーなどへの活用が期待されている」としながら、「シャープには、少し見方を変えたり、別の技術と組み合わせたりすることで、世の中を大きく変える可能性を秘めた技術やアイデアがまだまだ数多く眠っている。これらの発掘に向け、さまざまな取り組みを推進していく」と述べた。

 7月から実施している新規事業提案会は、その取り組みにひとつであるとし、現在、2次審査を通過した16チームが、12月に行われる最終審査に向けて、提案のブラッシュアップを重ねているという。「最終審査の当日は、私自身も参加を予定しており、各チームの提案を楽しみにしている」と期待を寄せた。

 また、2023年春には、社内技術コンテストを実施することを発表。「今後の成長力の源泉となるコア技術を見出すことが狙いである。本部を超えて応用ができ、将来、様々な分野でイノベーションを起こすことが期待できる独自技術を見出したい」とした。さらに、1年後には、対外的に技術を公開する「SHARP Technology Day」を開催し、社外のさまざまなステークホルダーとの協業を加速。差別化した独創的な商品やサービスの創出、ゲームチェンジの具現化につなげたいとしている。

 加えて、新規事業推進本部傘下にAIoT事業推進室を新設したことにも触れ、「これまでは、各事業がそれぞれ主体となってAIoT戦略を推進し、数多くのAIoT機器やサービスを創出してきたが、今後は、それぞれの機器やサービス間の連携を一層強化し、シャープならではの価値を生み出すAIoTプラットフォームの確立を目指す。AIoT開発をOne SHARPでより戦略的に行っていく」との方針を打ち出した。

 CEOメッセージの最後には、「2022年も残すところ約1カ月半となり、今後、世界各国で年末商戦がスタートする。どれだけ業績を積み上げることができるかが、修正公表値達成の鍵を握る。足元では市況が厳しくなりつつあるが、全社一丸となってこれを戦い抜くとともに、将来の反転攻勢に向けた確かな基盤を築いていこう」と呼びかけた。

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