Ricohリコーは21日、スマートフォンと無線通信でつながる携帯型ディスプレーを11月30日に発売すると発表した。
シャープやソニーなどから集まったメンバーによるベンチャー「teamS」(チームエス、東京)が独自に開発した技術「スマート・ストリーミング・エンジン」(SSE)を採用。スマホをポケットに入れたまま、大きなディスプレー画面で閲覧や操作ができる。チームエスは、スマホを補助し、タブレット端末に置き換わる可能性も秘めた次世代ディスプレーの開発に注力。日本発の新技術で世界へ挑む。

SSEが採用されたのは、「リコー ポータブルモニター 150BW」(オープン価格)。画質が鮮明な15・6インチの有機ELディスプレーだ。同等サイズの高機能タブレット端末と比べてコストがかからず、約715グラムと軽量で持ち運びやすいのが特徴。
使用する際は、スマホをポケットから取り出す必要はない。
 リコーは「対面の場を生かした少人数でのコラボレーションを促進するコミュニケーションデバイスとして活用できる」とアピールする。






最大5台まで同時接続して画面を共有することが可能。商談や打合せの場で紙の資料の代わりに配布し、メモを書き込むこともできる。ショールームなどで動画やカタログを見せながらプレゼンテーションを行える。

■電子書籍への不満から「チームエス」設立

チームエスの高嶋晃社長はもともとシャープで商品企画などを担当。シャープ退社後の平成12(2000)年、電子書籍配信会社「イーブックイニシアティブジャパン」(東京)を共同創業した。

電子書籍を読むためには端末が必要だが、読者からは「スマホもタブレットも満足できない」という声が寄せられたという。

「スマホはパソコンの機能をカバーするほど進化しているが、画面の大きさには限界がある。一方、タブレットは寝っ転がって読むには重たい」(高嶋社長)という課題を解決するため、浮かんだのがスマホを補助するSSEディスプレーのアイデアだった。

スマホでも、タブレットでもない新しいハードウエアを世に出したいとの強い思いから、平成28年にチームエスを設立。同じくシャープ出身の仲間も賛同し、中心メンバーとして加わった。

■折り畳み式展開へ、シート状の可能性も

「新しいものに挑戦したいというスピリットがある良いパートナーをつくることができた」

シャープで新規事業計画に携わっていた柳明生取締役は、SSEがリコーに採用され、商用化されたことへの達成感を口にする。

チームエスは、折り畳める下敷き程度の薄さのSSEディスプレーも展開する計画。シート状ディスプレーを量産化できれば、タブレット端末に置き換わる可能性もあるという。

元シャープ事業部長の大野良治最高技術責任者(CTO)は、SSEディスプレーに「最新のサービスを提供できる〝インフラ〟になる」と期待を寄せる。

インターネット上でデータなどを管理する「クラウド」と呼ばれるシステム環境を活用し、SSEディスプレーと双方向でつながる「バーチャルマシン」も来年に開発する予定だ。

■「世界の人たちのライフスタイル変えたい」

SSEディスプレーには、職場や家庭などで安心して共有できる利点もある。個人情報などのデータはスマホのほうで一元管理され、ディスプレーのほうには残らない。万が一、紛失しても情報流出のリスクは回避できる。

チームエスの試算によると、スマホの世界市場は成長が続き、2022年の出荷台数は15億台規模。25年には20億台規模に増えると見込まれる。対してタブレット端末は22年に3億台規模に達するものの、縮小する見込みだ。

こうした状況の中、チームエスはSSEディスプレーを普及させ、25年に5億台規模の市場を創出しようと目論む。

雷蕾(レイ・レイ)グローバルビジネス責任者(CGO)は「海外のパートナー企業とも新商品をつくり、世界中の人たちのライフスタイルを変えていきたい」と壮大な夢を描く。元ソニー海外マーケティング責任者の永濱幸裕マーケティングディレクター(MD)も「新しい価値体験を試してほしい」と話す。

日本の電機メーカーが世界を驚かせる革新的な製品を生み出せなくなって久しい。高嶋社長は「世界に役立つハードウエアの種をまきたい」と意気込む。日本発の新技術が生み出す成果に期待がかかる。

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