Screenshot 2022-12-05 07.59.27iPhoneの生産を担う中国の工場で、労働者による暴動が発生し、iPhoneの品不足が懸念されています。近年、経済のグローバル化が進み、私たちが手にしている製品は、世界のあらゆる場所で製造されるようになりました。
しかし、こうした経済の仕組みは、賃金が低い国に支えられている面があることも否定できません。米中の政治的な対立もあり、行き過ぎたグローバル化が見直される可能性も高くなっています。

よく知られているようにiPhoneは米アップルの製品ですが、同製品の多くは中国で生産されています。iPhoneの製造は専門の請け負い企業に外注されており、とりわけ鴻海精密工業はiPhoneの製造を一手に引き受けていることで知られています
(鴻海精密工業は日本メーカーのシャープを買収したことでも有名です)。





Screenshot 2022-12-05 08.01.31鴻海は中国に巨大な工場をいくつも建設しており、特に鄭州市と深セン市はiPhoneの2大生産拠点です。特に今回、暴動が発生した鄭州市の工場には、何と20万人の労働者が働いています。日本ではかなりの大手でも、全社員数が20万人を超える企業はそうそうありません。ところが中国では、1つの工場で働く従業員が20万人というケースはザラにありますから、スケールの違いに驚かされます。

iPhoneは日本人にとってもはや高額商品ですが、それでも、製造を中国に外注していることで、何とかあの価格を維持できています。私たちが普段手にしている製品の多くは、人件費が安い地域で製造されることが多いのですが、こうしたオペレーションが実現できるようになったのも、すべてはグローバル経済のおかげです。

過去20年、企業活動のグローバル化が一気に進み、各企業は1円でも安いコストを求めて、地球の裏側からでもモノを調達するようになりました。アップルはまさにグローバル企業の象徴と言えますが、私たちが普段、使っている日本企業の製品も、多くが東南アジアなどで生産されており、はるばる海を渡って日本にやってきます。

この仕組みによって、私たちは、本来、もっと高価だったはずの製品を安価に入手できるようになったわけですが、背後に、安い賃金で働く労働者が存在していることを忘れてはなりません。

中国では厳しいコロナ対策が続き、多くの労働者が工場を離れ、生産に影響が及ぶようになってきました。鴻海傘下の工場は、残った従業員にボーナスを支払うと約束したものの、それが支払われていないといった理由から、一部で暴動が発生した模様です。

情報が錯綜しており、正確なところは不明ですが、現地はかなり混乱しているとのことで、iPhone14とiPhone14 Pro Maxの出荷台数が想定を下回る可能性が出てきました。

今回の暴動は、ニュースで大きく取り上げられたので、多くの人が知ることになりましが、新興国における工場のトラブルは結構な頻度で発生しています。以前の時代であれば、多少、環境が劣悪でも、仕事がないよりはマシということで、こうした工場を積極的に受け入れる国も少なくありませんでした。しかし、社会がある程度、豊かになってくると、労働条件などに対する関心が高くなり、劣悪な労働環境は社会的に許容されなくなります。 

加えて、ここ数年は米国と中国の政治な対立が激しくなり、米中間の貿易を制限する動きが顕著になっています。日本でも安全保障上の理由から、中国への依存度を減らすべきという意見をよく耳にするようになりました。

 これまで中国は世界の工場として、低コストな製品の生産を一手に引き受けてきましたが、一連の国際情勢の変化によって、中国が今後も、その役割を担ってくれるのかは微妙な状況になってきたと言えるでしょう。

もし全世界に拡大したグローバル経済の仕組みが縮小することになった場合、私たちの生活も大きな影響を受けることになります。

製品の製造を担う従業員に相応の賃金を支払うということになれば、当然のことながら製品価格は大きく上昇します。安全保障上の理由から、調達先を分散したり、国内の製造に切り替えた場合でも、やはりコストが増加しますから、製品価格は上がる結果となるでしょう。

特に日本の場合、賃金がほとんど上がっておらず、諸外国の消費者と比較して購買力が著しく落ちています。ここにグローバル経済の縮小が加わった場合、私たちが買える製品はさらに少なくなってしまいます。

安全保障の問題は外交で解決できる余地がありますが、グローバル化による歪みは、本質的な解決が難しいテーマです。世界の人たちが相応の対価を得る社会を構築しようとした場合、やはり、価値のあるものには相応のお金を払う必要が出てきます。何でも安く手に入る時代は、いよいよ終わりを告げようとしているのかもしれません。

※記事の出典元はツイッターで確認できます⇒コチラ