lazer tech KpOz光応用技術を用いた数々の検査・計測ソリューションを提供するレーザーテック。最先端のEUV(極端紫外線)を用いた検査装置を世界で初めて開発。マスク検査装置で高シェアを誇る。半導体業界の技術革新をチャンスと捉え、その進化に合わせた製品を開発している。

 研究開発に特化したファブライト(自社で最小限の製造規模を維持しながら、製造を外部企業に委託する)企業として、光応用技術を核とした検査・計測装置を開発するレーザーテック。
現在は半導体関連の検査装置を主力事業とし、なかでも半導体製造時に使用されるフォトマスク(半導体デバイスの製造に用いられる回路パターンの原版)やマスクブランクス(ガラス基板上に各種の薄膜を積層したフォトマスクの材料)の検査装置など、世界市場において高いシェアを誇る製品を数多く有している。





高付加価値分野に経営資源を集中

同社の大きなターニングポイントとなったのは2009年、岡林理氏が社長に就任した年に起きたリーマンショックだ。当時、半導体関連装置と液晶ディスプレイのカラーフィルタ修正装置を事業の2本柱としていた同社。他社製品と競争が激しかったカラーフィルタ修正装置は薄利多売の状況で、リーマンショックによる需要の低迷も重なり、赤字を抱えることになった。

「他社と技術的差別化ができない分野での価格競争は得意ではありません。最終的に、カラーフィルタ修正装置を台湾の代理店に譲渡する決断をし、そこに携わっていた技術・サービスの人材を他社との差別化ができる半導体分野においてEUV関連装置やウエハ関連装置など新規事業に集中させました」。

同社の理念は「世の中にないものをつくり、世の中のためになるものをつくる」。2009年、岡林氏は社長として「当社の強さが発揮でき、我々が成長できる分野に経営資源を集中する」と経営方針を打ち出し、「世界中のお客さまから真っ先に声をかけていただける会社になる」ことをビジョンとして掲げた。これらの施策が奏功し、半導体関連の検査装置では、世界中の顧客から一番に声がかかる会社に成長できた。今後も、付加価値の高い製品に特化し、世界中にソリューションを提供する企業を目指していく方針だ。

未知の分野に挑戦する社風が新たな価値を創造する力に

同社の社員の約70%はエンジニアであり、強みは技術力にある。例えば、現在主力となっているEUV(極端紫外線)を用いたマスクブランクス検査装置。この装置の起源は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が出資して作った官民のコンソーシアムだ。同コンソーシアムでは、EUV露光の周辺技術を開発していた。ここに参加していた世界中の半導体メーカー、材料メーカーの要望で、レーザーテックへEUVを用いたマスクブランクス検査装置の開発依頼が舞い込んだ。マスクブランクスの検査装置に関しては、当時から世界シェア100%を取っていた同社。しかし、EUVを用いた検査装置の開発は初めてだった。

「我々自身、技術を習得しながら、コンソーシアム参画企業の助けも借り、新たに開発してきました。現在、社内に技術がなくても、それを習得し製品化するというチャレンジ精神旺盛な技術陣だからこそ、できたことだと思います」と岡林氏は振り返る。

技術者と顧客との距離の近さも、新製品を開発するには大きく貢献している。例えば現在、ユーザーが増加中の炭化ケイ素(SiC)ウエハ検査装置。省エネ特性に優れたSiCはパワー半導体に使われ、電気自動車の航続距離を伸ばすことができると注目されて、今後の成長が期待できる分野といえる。この検査装置は、顧客の要望をうまくすくい上げることで生まれた。

レーザーテックの製品の1つに、研究開発、生産現場で検査などに用いる工業用の顕微鏡がある。これを使ってSiCを評価しているという話から、顧客にその背景や満たすべき要求事項をヒアリングし、専用の検査装置の開発に踏み切ったのだ。

このケースのように、技術職の担当者が顧客のもとへ足を運び、将来のニーズ・要求の背景を掴み、真に顧客の必要なものを自らスピーディに開発できることは同社の強みと岡林氏は考えている。

「我々はマーケットインの会社で、プロダクトアウトの会社ではありません。何か新しい製品を開発する場合は、お客さまから必ずインプット・要求があり、それに基づいて開発を行います。新たな技術を持っていない場合でも、『これが欲しい』という要求に対し、必要な技術を習得、あるいは外部メーカーの力を借り、新たな価値を創造していくのが当社のビジネスモデルです」。

難しい要求がビジネスチャンス需要にこたえる設備増強を予定

パソコンやスマホ、タブレットに加え、データセンターのサーバー、AI、IoT、5G、自動運転、メタバースなど、半導体を使うアプリケーションは広範に及んでいる。中長期的に見れば、半導体マーケットは今後も堅調に成長していくだろう。さらに、半導体技術は日々高度化し発展しており、それに伴って検査・計測に対する要望も年々難しくなってきている。

「だからこそ、我々の活躍する場があると考えています」と岡林氏。

例えば、パワー半導体では、SiCのほか、酸化ガリウム(Ga2O3)、窒化ガリウム(GaN)などの新しい素材開発も進んでいる。レーザーテックでも、SiC用検査装置の姉妹品としてGaNの検査装置を製品化。半導体の材料や構造が変わり、微細化が進めば、より高度な検査・計測装置が必要になる。それは、同社にとっての新しいビジネスチャンスでもある。

半導体の需要増加にともない、レーザーテックは現在、多くの受注残高を抱えている。製造のキャパシティを拡げる目的も兼ね、横浜市内に研究開発拠点となる「レーザーテックイノベーションパーク」を新設する(2023年中に稼働予定)。短期的な目標として、まずは旺盛な受注に対し、生産・立ち上げの能力を増強していく予定だ。

「これからも、当社の強さを発揮でき、最も世の中に貢献できる分野を広げていきます。我々の力を発揮でき差別化できる分野である半導体分野には引き続き力を注いでいきますが、それ以外の分野でも、我々が貢献できる分野があれば、積極果敢にソリューションを創造していきたいと思います」と岡林氏は語った。

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