JDI 202301ジャパンディスプレイ(以下JDI)は、CESで透明液晶ディスプレイ「Rælclear」(レルクリア)を出展した。展示はデザイン会社・トライポッド・デザインのブース内で行なわれ、サイズの違う2つのディスプレイが公開された。 Rælclearは、他の透明ディスプレイに対しどのような特徴を持つのか?

 詳細について、JDIでRælclearの研究開発を統括する、株式会社ジャパンディスプレイ・R&D本部 主幹研究員の奥山健太郎さんに聞いた。

 ■ Rælclearの特徴は「ガラス並みの透過度」と「面裏活用」

 Rælclearがどんなものか、改めて解説するところから始めよう。 Rælclearは液晶技術を使い、バックライトを背面に敷き詰めることなく前後から透過して見えるよう作られたディスプレイだ。 特徴は、透過度が極めて高いこと。電源をオフにした状態では、各回路まで含めたディスプレイ部の透過度が、2021年出荷の12.3型で84%、新型(詳しくは後述)の20.8型に至っては90%に達している。
 実はこのこと自体が、透明ディスプレイとして大きな差異になっている。





今年のCESは密かに「透明ディスプレイ」がトレンドだった。有機ELを使うと比較的容易に作れるのはわかっており、主にB2Bでサイネージなどでの利用が想定されている。そこに今年は、LGエレクトロニクスが「テレビ」としての活用をアピールしていた。

たしかに透明なのだが、LGの実機を見た筆者は、少々落胆したのも事実である。なぜなら、透過度がかなり低いからだ。透けさせたい方向からかなり明るい光で照らさないと、ちゃんと見えない。空中に透明な板がある、というイメージからはほど遠い。

一方、Rælclearは、透過度が84%以上あるので、表示されていない状態では完全に「透明な板」にしか見えない。この状態での透過度は、ほぼガラスと同じである。一般に透明な有機ELは透過度が30%台だということで、差は歴然だ。奥山氏も「この透過度の高さが最大の違い」と話す。

とはいえ、ライトを使って「発光する」ディスプレイなので、内容を表示すると明るくなる関係上、透明感は下がる。その上でもう一つの大きな特徴は「両面表示」であることだ。

ほとんどのディスプレイは片面側へと情報が表示される。片側は使わないのでそれでいいわけだが、透明ディスプレイになると、反対側からも情報が見えることになる。だが、片側からの表示だと、反対側からは文字や情報が逆に見えることになる。

Rælclearは両面にディスプレイとしての機能があり、双方からそれぞれ別の情報を、正しい形で見ることができる。その上で、高い透過度を維持しているのは大きい。

そのため現状は、自治体の窓口など「両方に人が立って使う」現場で主に使われている。

■ 2023年には「透過度90%・20.8インチ」のパネルを量産

もちろんトレードオフはある。

ディスプレイであるので光を出す必要があるが、上から走査するように出すため、高速なシャッタースピードで撮影すると色割れが起きる。また、コントラストも一般的なディスプレイほど高くはない。2021年発表の製品では、サイズも12.3インチと小さかった。

だが、2023年はこれらの点を改善した。

2023年に量産予定となっている新パネルでは、サイズが20.8型と大きくなり、より用途を拡大している。透過度も84%から90%へとさらに広げた上に、書き換えのレートも120Hzになったため、色割れなどをより感じにくくなった。

このぐらいのサイズ感・品質になってくると、まさに「透明ディスプレイ」感覚で、卓上などで使うことも考えられる。現状ではやはり、表裏を生かした窓口業務など、B2B向けの市場を中心に想定しているが、「より幅広い使い方も考えられる」(奥山氏)と、JDI側も期待を寄せている。

これらのパネルについては、一般的なB2B販路のほか、用途開拓を目的に、クラウドファンディングなどでの販売も検討はしていくという。

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