OLED 2023 March3年ぶりにCESを現地取材した麻倉怜士氏が、LGディスプレイの最新有機EL「META」と、サムスンの最新QD-OLEDの特徴を紹介。
激しくなってきた「有機EL競争」の行く末を占った。

 ――今年はLGディスプレイとサムスンディスプレイによる「有機EL画質戦争」が、さらに本格化しそうです。

 麻倉:その競争軸は輝度です。HDR時代になって、高輝度が要求されても、自発光パネルである有機ELでは、むやみに電流を投入することはできません。リミッターが掛かってしまうので、低めの数百nitsという平均輝度で抑えられていました。





また、輝度を上げると信頼性、安定性、寿命という自発光デバイスならではの問題も立ちはだかります。こういった限界をどう乗り越えるかが、ここ数年の有機ELパネルの重要課題でした。

実は輝度対策を初めて行なったのは、LGディスプレイではなく、パナソニックでした。それが「熱を逃がして、電流を流し込み、輝度を上げる」という作戦です。有機ELは自発光素子なので、輝度を高めるために電流量を増やすと必ず熱が出ます。この放熱処理が重要なポイントになります。

パナソニックは、熱を背後から逃がす放熱板インナープレートを、LGディスプレイからの標準品ではなく、より熱拡散作用が大きいカスタム品に換えることで、輝度向上に成功しました。この手法はいまや日本の全メーカーが追随しています。

LGディスプレイとしても、インナープレートについて、そのまま標準品を付けるか、液晶パネルのオープンセルのように、セットメーカーが独自にしつらえるか、のオプションを与えています。