技術の種をどう育てていくかは、企業経営にとっても重要な課題だ。AGCはガラスや化学品などの既存事業と新規事業を両立させる「両利きの経営」を掲げ、新しいイノベーションを生み出すための「模擬スタートアップ」を社内につくっている。
同社の最高技術責任者(CTO)出身で物理学者を目指していたという平井良典・最高経営責任者(CEO)にAGCの戦略、企業と研究機関・大学との関係がどうあるべきか聞いた。
- 2021年1月に最高技術責任者(CTO)から最高経営責任者(CEO)へ就任しました。CTO出身者として日本の基礎研究と産業競争力の関係をどのように見ていますか。
AGCの平井良典CEO(以下平井氏):日本の大学ランキングが2000年代から徐々に下落していったタイミングは、ちょうど日本の産業競争力が落ちる時期と重なります。かつて私が関わっていた液晶ディスプレーは2000年代に世界の約8割のシェアを日本が持っていたものの、もろくも崩れ去り、08年にAGCも液晶パネル子会社の売却を迫られました。
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