LCDの表面処理は、偏光板の最表面フィルムにハードコート(HC)層を塗工し、その上にAG加工を施すG(Anti Glare)系とHCのみのクリア(Glare)系に分かれる。また、それぞれ上の層に低反射処理(AR/LR)を行う場合と、低反射処理を行わない場合がある。
TV用の表面処理は、クリア系に近い低ヘイズAGフィルムが主流になりつつある。
一方、スマートフォンやタブレットなど高精細パネルを使用したモバイル向け表面処理では、映り込みよりも発色の良さが重視されており、クリア系(HC/HCLR)が主流となっている。



シャープは2012年10月に行われた「CEATEC JAPAN 2012」において従来の表面処理技術と異なるモスアイ型反射防止フィルムを採用した「モスアイパネル」を参考出展した。偏光板とは別体のモスアイ型反射防止フィルムは、表面に微細な突起を施し低反射処理を実現させており、TVの発色を損なわずに外光反射を抑えることが可能である。
TV用途のモスアイ型反射防止フィルムは、4K2Kなど高精細化対応や防汚性の改善が必要となるが、今後の採用拡大への期待は高い。また、モスアイ型反射防止フィルムの量産化により、コスト重視の傾向が続いていたTV用反射防止フィルムに一石を投じる可能性が高い。反射防止フィルムメーカーはAGや反射防止処理を施さないHCのみの製品仕様から低反射処理(AR/LR)採用の流れへ向かうことを期待している。
また、モスアイフィルムの市場ポテンシャルは、太陽電池やLED・有機EL照明の光取出しフィルムなど反射防止用途以外にも広く、実用化への期待が高まっている。

※1 ヘイズ値 : 防眩性を表す指標。数値が小さいほどくすみが少なくクリアに近くなる。