米Applied Materials社は2012年10月31日に横浜で記者発表会を開催し、酸化物半導体のIGZO(In-Ga-Zn-O)用、および第8.5基板対応の低温多結晶Si(LTPS)用の成膜装置の新製品を発表した。いずれの装置も、次世代の液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイの製造コスト削減を可能にするという。
高性能の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの量産に向けて、LTPSやIGZOのような、新しいTFT材料を採用する動きが活発化している。これらのTFT材料は、現在主流のアモルファスSi(a-Si)に比べて移動度などの性能が高く、ディスプレイの表示性能向上、低消費電力化、低コスト化の実現技術として、期待を集めている。とりわけ有機ELテレビにおいては、これはディスプレイの寿命を大きく伸ばすことにつながり、そのメリットは大きい。
発表会の場では、まず三つのLTPS用CVD装置が発表された。第5世代基板対応の「AKT-15KPX」、第6世代基板対応の「AKT-25KPX」、そして第8.5世代基板対応の「AKT-55KPX」だ。「第8.5世代基板対応のLTPS用CVD装置を作るのはきわめて困難と言われてきたが、ついに世界初の装置を発表することができた」(同社)。
Applied Materials社は「LTPS用CVD装置で、4.5世代から8.5世代までカバーしているのは我々だけ」と力強く宣言。いまなお高コストという課題があるものの、携帯端末の爆発的な普及を受けて、LTPSを使用したディスプレイは次第に世の中に広まっていくと、同社は予想する。
続いて同社は、すでに複数のパネル・メーカーで導入されている、IGZO用スパッタリング装置「AKT-PiVot IGZO」を発表した。これは、円柱状のターゲットを回転させながらスキャンすることにより、従来の平板式装置で発生しがちなノジュール(ゴミのようなもの)の発生を著しく低下させていることが特徴だ。「我が社のマジック」(同社)と自画自賛する、ロータリーの内側で磁石を稼動させるシステムにより、優れた均質性も保持。これまでIGZOの課題とされていた、ディスプレイ上でのムラ現象を抑え、高い歩留まりと生産性を確保できるとする。これにより、ディスプレイの製造コスト低減に貢献できるとしている。
IGZOを用いたディスプレイの量産は、今年から始まった。開催中の「FPD International 2012」(10月31日~11月2日、パシフィコ横浜)の展示会場内にある半導体エネルギー研究所のブースなどでも、a-Si TFTのディスプレイとIGZO TFTのディスプレイの比較展示を見ることができる。
Comment
コメントする