スマートフォン最大手、宏達国際電子(HTC)は11日、アップルと和解し、世界でのすべての特許侵害訴訟を取り下げ、10年間のクロスライセンス(相互ライセンス)契約を締結したと発表した。これにより2010年3月から続いてきた特許紛争に幕が下りた。一方、アップルはグーグルのアンドロイドOS(基本ソフト)を採用する他のメーカーと和解する意図はなく、HTCとの相互ライセンス契約は、サムスン電子をけん制することが狙いとみられている。12日付工商時報などが報じた。
HTCの周永明執行長は、「アップルと和解に達してうれしい。訴訟でなく創造に専念できる」とコメントした。相互ライセンス契約の範囲は、既存のみならず将来の特許にも及ぶ。和解額や相互ライセンス契約の内容は明かせないが、財務上の影響は大きくなく、第4四半期の業績予測に変更はないと強調した。
証券会社の見積もりによると、相互ライセンス契約でHTCがアップルに支払う権利金は1台当たり5米ドル以下。HTCがWindows Phone(ウィンドウズフォン)OS使用でマイクロソフト(MS)に支払う権利金約5米ドルとほぼ同額だ。証券会社は、HTCの今年の出荷予測3,000万台から試算すると、年間の権利金は1億5,000万米ドル余りで、今年第1?3四半期の純利益157億台湾元(約430億円)の4分の1以上に相当するため、今後は新機種の販売価格に組み入れる可能性があるとの予測を示した。
HTCはアンドロイドOS搭載の携帯電話でグーグル最良のパートナーと目され、10年3月にアップルから特許侵害で米国際貿易委員会(ITC)に提訴された。同年5月にアップルを逆提訴し、その後両社の紛争はドイツ、英国まで広がった。今年5月にはITCの判断で、HTCの主力機種が米国の税関で半月以上留め置かれ、HTCの第2四半期業績に大きな打撃を与えた。
市場調査機関、IDCの調査によると、HTCはスマートフォン出荷シェアが第3四半期に4.06%(前年同期10.27%)まで半減し、5位に順位を落としていた。アップルとの和解で米国での販売が伸び、来年のシェア回復が期待できそうだ。一方、アップルは2位14.97%(同13.82%)と微増で、首位サムスンが31.33%(同22.72%)まで大きく勢力を伸ばしたことが目障りなはずだ。
ハイテク関連サイトの分析によると、アップルはもはやHTCを恐れていない一方、アンドロイド陣営との特許侵害訴訟の中でも特に全面勝利が困難な相手だと見なしていた。和解すれば無駄な訴訟費用が不要となる上、相互ライセンス契約の締結でHTCはアップルの技術を使用したスマートフォンを米国で販売できるが、サムスンはそれら技術を使えない。こうした「敵の敵は味方」という理屈で今回の和解が成り立ったとの見方が多勢だ。
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