業績の悪化している日本企業、特に電機業界が収益体質へと変革を求め構造改革を進めています。
トップが方向性を決断し組織に浸透させ動かそうとしています。この組織を大胆に動かすにあたり必要なこととは何でしょう?

そのためには組織の特質を考えてみる必要があると思います。

まず欧米企業を考えてみますと、組織のヒエラルキーそしてミッションの区割りがはっきりしていてトップダウンで指示が落し込まれます。構成員個々人も個人主義・能力主義がベースになっていて、組織のミッションが個々人のミッションにまで明確に落し込まれています。
受持つ責任に応じて給与も大きく異なり上下関係がはっきりしており、その流れに基づきトップの意思が効率的に浸透するようになっています。トップの決断いかんによって大きく業績が左右され、企業経営の専門職・プロとしてその役割は極めて重要でありそのため高給を得ています。



一方、日本企業の組織の特質としては現場や実務一線の組織力が強固でなおかつ構成員の能力水準も平均的に高いのが特長だと思います。
組織間の壁が高いと言っても密な交流が図られており組織図とは一線を画し実際のところは網の目のような意思疎通パスが出来上がっています。
組織を仕切る長や幹部社員にそのような役割を持っている人が多いのではないでしょうか?
会議前の根回しや調整といったところにその力量が発揮されますし、製造現場を仕切っている親分肌の長といかに信頼関係を築いておくかも仕事をスムーズに進める上で欠かせないポイントとなります。

そのような日本企業組織の場合、トップがいくら声高に変化を求めてもそれだけでは動きません。
現場の力が強く現場にとって得になることそれも現場間で結束するような形が出来た場合、その行動力やスピードはおそらく世界最強だと思います。
反対に現場で納得できないことをトップが決めても面従腹背を決め込むこともあります。日本企業の組織は甘くはないと思います。
そうした日本の組織をよくわかっていたのがカルロス・ゴーン氏だという指摘があります。
部門横断のクロスファンクショナルチームを作って当時40歳前後の人間を抜擢して全部権限を移管し組織レイヤー毎に改革を自ら考えさせたのです。
ゴーン改革はトップダウンと思われがちですが、そうではなく日本の組織の特質を深く理解し細かいことを言わず任せて進められたのです。

つまり、現場の実力者がトップの意思を深く「腹に落とす」ステップが必要なのです。
現場に苦しいことでも、長い目で見て結局は得になる(例えば今は苦しくても次世代の得になるという発想でもいいでしょう)ということを説明し納得させる能力が必要だと思います。
その日本企業の要諦、組織の機微をとらえる高度なコミュニケーション能力が備わっているか、改革を進めるトップに求められている力量だと思います。