次世代テレビとして期待される「有機ELテレビ」を巡って、韓国サムスン電子は今年中としていた発売時期を2013年前半に延期する。LG電子も発売を来年に先送りした。高級テレビの需要拡大が見込みにくいうえ、製造コストが下がらず採算を確保できそうにないためだ。韓国勢が次世代のテレビ事業で技術の壁にぶつかっている。

サムスンは有機ELテレビを年内に発売すると明言していた(5月、ソウル市内)
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サムスンは有機ELテレビを年内に発売すると明言していた(5月、ソウル市内)

 有機ELテレビは表示装置として主流の液晶パネルに代わり、有機ELパネルを搭載した薄型テレビ。電圧をかけると発光するため、背面から照らすバックライトが不要で薄型にできる。薄型テレビ世界首位のサムスンは1月に米ラスベガスで開かれた家電見本市に55型の有機ELテレビを展示し、年内に市場投入すると表明していた。




だが、実際の製造現場では基幹部品である有機ELパネルで「(良品率を示す)歩留まりが上がらない」(関係者)状況だ。現状のまま発売すれば売れば売るほど赤字になる。技術力でイメージを向上させるメリットはあるが、それだけでは大幅な採算悪化を穴埋めしきれず、発売を延期せざるを得なくなった。

リビング用の大型の有機ELテレビは、日本や中国のメーカーも販売していない。サムスンには消費電力で高画質というイメージが強い有機ELテレビを早期に投入して、高収益につなげる狙いがあった。だが液晶テレビの高画質化も進み、有機ELテレビの優位性は想定より薄れている。サムスン社内では、新たな発売時期について「早ければ来年1~3月期」という声が出ている。

 サムスンと同様に55型品を公表済みのLGも年内としていた発売時期を年明けに見送った。サムスンが赤緑青の三原色をガラス基板上に形成する手法で苦戦しているのに対して、LGはコストが安い別の方式を採用した。試作段階ではサムスンに比べて不良品の比率が低いが、採算ラインには届いていないもようだ。

 両社が苦戦する間、薄型テレビは新興国での普及の一巡と世界景気の減速により市場が頭打ちになっている。米NPDディスプレイサーチによると、12年の液晶テレビの市場規模は約1004億ドル(約8兆5500億円)と、11年より縮小する見込みだ。

 日本勢では、ソニーとパナソニックが共同でテレビ用有機ELパネルを低コストで量産する技術を来年中に確立する方針だ。日本メーカーはサムスンやLGの製品化の時期を見極めたうえで、新市場が拡大する時期にあわせて大型画面の新製品を投入するとみられる。