LED (Light Emitting Diode)は数年前から一般照明用として蛍光灯の効率に近くなり、寿命も4万時間と言われて普及が期待されているが、モバイルフォーン・タブレット、PCや液晶テレビのバックライトに使われて、急速に需要が拡大している。
液晶テレビへの使用方法は、画面全面に敷き詰める直下方式と、画面端に並べて導光板で全面を照射するエッジライト方式に分かれている。平均すると、1台に200個、大型だと500個ものLEDが使われ、1億台のテレビに用いられると、200億個/年のLEDが必要になると言われる。


LED_img_01LEDの発光原理

半導体のPN接合に順バイアスし接合部で電子と正孔が再結合すると熱と光が発生する。発光波長をλ(単位;nm)、バンドギャップをEg(単位;eV)とすると、λ=1,240/Egの関係にある。従って、バンドギャップEgを変えると、色々な波長の光が取り出せる。 現在、話題になっている白色LEDの場合は、n-AlGaN/GaInN/p-AlGa N構造の図のようなダブルへテロ接合が用いられる。

AlGaNのEgはGaとAlの混晶比にもよるが大体2eV程度であり、GaInNのEgはInの比率で異なるがそれより小さい。そこで、接合に注入された電子と正孔はバンドギャップの小さいGaInN層に集まり再結合が起こり易く、発光効率が向上する。光の波長を変えるには、Inの組成を変えればよいが、逆に言えば、組成がバラツクと発光波長がバラツクことになり、製造ではかなりの問題点となっている。なお、300nm程度の短波長にはAlGaInNが用いられる。
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LEDの構造と製造方法

サファイア基板の上に、何層にもなる化合物半導体をMOCVD装置でエピタキシャル成長させる。その構造は図のように非常に複雑である。サファイアとGaNは結晶の格子定数が16%も異なるので、結晶欠陥の少ない単結晶を得るには、バッファー層を挟む必要がある。LED発光層の組成は極めて重要であり、膜厚やInなどの組成が設計通りでなければならない。CVD中の温度は700~1,000℃の高温なのでウエーハの反りによりホットプレートと接触しない部分が出来て均一な温度分布を得るのが難しく、サファイア基板を反りの発生分だけに事前に補正しておかなければならない。
発光層のInGaNの生成では、CVDが高温になるほどInの組成比が少なくなって、発光波長が長波長になる。 実際に製造されたLEDの組成はバラツイており、光の波長、光出力、掛ける電圧などによってビン分類される。波長のバラツキは5nm以内にしたいと言われているが、実際はビン分類してそれに対応した蛍光体を組み合わせて、不良チップを少なくしている。
現在、ウエーハは2インチ径が主流で、それでも1枚から数千個のチップが取れるが、6インチ化が進行している。
ただ、6インチになると反りも大きくなり簡単ではない。MOCVDは原子1層づつ積層して行くので1枚の処理に数時間以上掛かっている。時間短縮はかなり困難なので、大バッチ処理の装置が開発され、生産では数十枚の2インチウエーハを一括処理しているが、ガスの流れ方で特性のバラツキが増える恐れがあり簡単ではない。

 電極は、フォトレジストでマスクしn-GaN層までエッチングして電極付けを行い、最上部は透明導電膜としてZnOが用いられる例が増えている。

ダイシングは、Siで用いられているブレードではGaNが硬くて切れないので、レーザーカットが行われる。レーザーでGaNを幅5~10μm、深さ20μm程度を熱で溶解・蒸発させた後、チョコレートブレーク式に割る訳だが、デブリスと呼ばれる蒸発物残渣が周りに付着するので余り好ましくなく、これに代わってステルスダイシングと呼ばれるレーザーカット法が開発された。
レーザー光をウエーハ内部でフォーカスして結晶歪を起こして割る方法で、貫通電極用にシリコンの薄ウエーハのダイシングなどに応用されている実績がある。  
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蛍光物質

白色光を得るには、紫外線または青色光のフォトンエネルギーを吸収して発光する蛍光物質が用いられる。一般には、酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系など多くの種類がある。酸化物系では、YAG蛍光体が用いられ、460nm付近のLED光をよく吸収し、555nm近辺の黄色を発光するが赤成分が不足する。

発光は、Ce(セシウム)イオンによるが、最近Eu(ユーロビウム)が注目されており、Ceより赤色成分が多くなる。窒化物系は、耐久性に優れると言われている。硫化物系は逆に吸湿性に問題があって使い難い。青色LEDと黄色YAG蛍光体を組み合わせると、演色性に若干問題があるが、発光効率は100Lm/Wを遥かに越えて蛍光灯より優れている。

また、青色LEDに緑色蛍光体と赤色蛍光体を組み合わせてRGBを実現する案もあるが、赤の蛍光体の発光効率が良くないので、輝度が落ちる。光のエネルギーは波長に逆比例するので、460nmの光を555nmに変換すると、約20%の損が発生する。これをストークスロスと呼んで蛍光体を使う以上は避けられないロスである。蛍光体は、ブラウン管カラーテレビなどに大量に使われてきたが、LEDでは励起エネルギーが全く異なるので、新しい研究が期待される。LED_img_02