[2017年3月30日更新] ....有機ELに集中していく戦略での生産ラインのリシャッフル状況を反映しました。

SDI Asan a035d_2017保存1.事業概要

韓国のSamsungグループの中核の企業の一つで、グループ内に液晶ディスプレイを供給している一方、外販も積極的に行っている。
グループの再編・統合が進められSamsung El.(サムスン電子)、Samsung Mobile Display が2012 年7 月1 日付けで合併して設立された。それに先立って2011 年12 月にソニーとのパネル合弁会社だったS-LCDのソニーの持株を100%、Samsung El.が取得していた経緯があり、実質Samsung El.、S-LCD、Samsung Mobile Displayの三社が合併してできたディスプレイ専業会社である。
中小型から大型のLCD およびOLED の生産能力があり、状況に応じたディスプレイ戦略を立てることが可能となった。
中国メーカーの液晶参入等の動きを先取りし、事業の主力を有機ELに集中していく戦略を採用、生産ラインのリシャッフルを進めている。(2017年)



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2.出荷量推移・計画

[旧Samsung El.、S-LCD分]
①2011 年の売上金額は22 兆7,000 億KRW(1 兆6,117 億円)と、前年から約11%金額を落とした。
②2011 年の販売枚数は、TV 用で5,000 万5,000 枚、PC モニタ用で3,800 万枚、ノートPC 用で5,600 万枚、タブレット用で2,700万枚であった。
[旧Samsung Mobile Display分]
①2011 年の同社の売上金額は、およそ7 兆KRW(約5,000 億円)であり、その内、LCD 向けの販売金額は、2,110 億円となった。携帯電話用途のウエイトが9 割弱を占めた。
②携帯電話向けでは、フューチャーフォンがメインとなっており、販売単価はそれ程高くない。スマートフォン向けは、同社のOLED パネルを中心に販売を行っている。
③ 2016年同社の売上金額は2兆7490億円、利益は2300億円を達成している。大型液晶はシェア3位、有機ELはシェア1位である。


3.主要販売先 
 
①TV 用途では自社およびソニー向けの比率が高く、この2 社で6割超となっている。その他、東芝や三菱電機、中国メーカー等に納入している。2012 年から、自社のVD 事業部向けのパネルは、セル売りとなっている模様。
②ノートPC、PC モニタ共に大手メーカーのほとんどと供給関係を有している。
③タブレットは、Apple と自社向けを中心に供給を行っている。

④2017年現在、事業のリシャッフルにより、TV向けパネルはほぼサムソン向けに集中、スマートフォン向けには有機ELとなっていてこちらもサムソン向けに集中していたが一部外販も始めている。


4.生産ラインの状況
 
[旧Samsung El.、S-LCD分]
①2012 年以降のパネルの増産計画は立っていない。中国におけるLCD パネルの関税が引きあがったことで、蘇州で進めていた新規工場のプロジェクトが再び進んでおり、2013 年末からの稼働を予定している2013年10月に竣工した。その一方で、中国政府側がLCD ではなくOLED という声も強く、まだ計画の詳細が決まったわけではない。
②2012 年には、天安L6 にIGZO ラインを導入しており、2013Q3 からの量産を計画している。主にApple のタブレット「New iPad」向けになると予測される。
[旧Samsung Mobile Display分]
①生産ラインは器興、天安に設置されている。現在は天安を主力工場としてLTPS の生産に対応している。
②LTPS パネルの販売を縮小していく考えであるが、2012 年下期に入って、5in-FHD の400ppi 以上の高解像度パネルの需要が旺盛になってきており、これに対応したライン改造も検討されている。

③以前より出ていたG10 ライン建設の話は、昨今のパネルの市況を考察するに立ち消えとなりそうである。
④2013年7月、55インチのOLED TVを発表、OLED TVの世界市場投入を宣言した。
⑤モバイル向けに有機ELを採用するという大方針で生産ラインのリシャッフルを強力に集中・推進。低効率の旧液晶ラインは停止・売却し、液晶もハイグレードテレビや曲面テレビ向け/IT向けに集中させた。標準型テレビ向けは外部液晶メーカー(中国・シャープ)から調達に切り替えている。
シャープがサムソン向けパネル供給を停止したため、不足分を韓国ライバルのLGDから調達することで合意した。(2017年)
 
生産ライン (前工程ラインのみ)

【生産ライン】
名称 技術 世代 ガラスサイズ 設立年 生産能力 注記
器興L1 a-Si G2 370x470 1995 35k 停止・破棄
器興L2 a-Si G3 550x650 1996 30k 停止・破棄
天安L3 a-Si G3.5 600x720 1998 100k 停止・破棄
天安L4 a-Si G4 730x920 2000 110k 停止・破棄
天安L5 a-Si G5 1100x1250 2002 205k Trulyに売却済
天安L6 ※ a-Si G5 1100x1300 2003 240k
→60K
Oxide化、売却検討
IT向け
湯井L7-1
→A4
a-Si
OLED
G7
G6OLED
1870x2200
→1500x1800
2005
2017
145K
75K
有機ELラインに改造
Apple対応
湯井L7-2 a-Si G7 1870x2200 2006 110k TV/IT向け
湯井L8-1 a-Si G8 2200x2500 2007 150k TV向け
湯井L8-2 a-Si G8 2200x2500 2009 168k TV/IT向け
湯井A1 OLED
G4.5 2200x2500 2015 53k Flat/Flex OLED
湯井A2 OLED
G5.5 2200x2500 2015 166k Flat/Flex OLED
湯井A3 OLED
G6 2200x2500 2015 135k Flex OLED
Apple対応
湯井V1 OLED
G5.5 2200x2500 2015 23k
Flat/Flex OLED
蘇州 a-Si G8 2250x2500 2013 120K TV向け

  ※ --- IGZO導入
  ※ --- 蘇州工場は2013年10月に竣工した 

Tangjeong 2010_2017
5.設備投資計画
①2012 年のSamsung グループのディスプレイ投資は、4700億円の計画である。昨年に引き続き、ほとんどがOLED 向けで液晶関連の投資は、およそ350 億円となる見込である。中国の工場立ち上げや、ライン高効率化の為の改変等に採用される見込である。新規開発のパネルよりも、安定したパネルの量産を目指している節があり、投資額が少なくなっている。

②2016~2017年にかけて有機EL/液晶工場再編に42億US$投資する見込みである。


6.新製品・技術開発動向

IGZO
2012 年から本格的な導入を始めており、G5 のラインではLCD を製造する計画である。今後、OLED への展開も睨んだ導入と考えられる。
 
TV 向けパネル
①2012 年よりSamsung El.にTV 向けのパネルでは、新規サイズである43in を2011 年Q4 から量産し始めており、ガラス基板の有効利用を進めている。
②TV 向けのカラーレジストには、従来の顔料ではなく染料とのハイブリッド品を用いたCheil Industries 製品を採用している。これにより、透過率を高めたパネルを生産している。
③従来のPSVA から、配向膜側に光拡散材を設けたFVA パネルの開発を進めている。

有機EL
①リジッド~フレックス有機ELの量産化に成功、自社のGalaxyスマートフォンに採用している。


7.部材内製化/グループ内調達の動向
前工程から、後工程までほとんどの部材で内製を推進している。LED は、Samsung LED で行っていたが、2012 年よりSamsung El.に統括された。ディスプレイ向けはもとより、Samsung ブランドを活かした照明向けにも展開していく考えと言える。

COF/TAB STEMCO/Samsung Techwin/STECO(TAB/COF実装サブコン)
拡散板/導光板 Cheil Industries
カラーフィルタ 内製
カラーレジスト Cheil Industries
偏光板 Cheil Industries
ITOターゲット材 Samsung Corning Precision Materials
ガラス基板 Samsung Corning Precision Materials ※
LED 内製
バックライト DI Display、DS LCD、Teasan、Hansol LCD
精密印刷装置 Carys(ナカン、Samsung El.、WIA)
その他 Cheil Industries(液晶材料、配向膜)

 ※ --- 2013/10/25、サムスンは米コーニングに出資することを発表した。ガラス分野で提携を強化・拡大する。

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[更新履歴]
・2013/11/1 初版