朝鮮半島情勢の緊迫化を受けて、台湾経済部工業局と工業技術研究院(工研院)産業経済趨勢研究センター(IEK)は9日、北朝鮮が開戦に踏み切った場合の台湾産業への影響をまとめ発表した。電子産業では、液晶パネルなど競合分野で受注増が見込めるものの、発光ダイオード(LED)など韓国市場に製品を供給している分野では受注を失う懸念がある。10日付経済日報などが報じた。
液晶パネルは台湾が恩恵を受ける筆頭に挙げられる。世界最大の液晶テレビ市場である中国は労働節(メーデー、5月1日)連休前の需要期に入っているが、韓国メーカーの出荷に懸念が生じれば、中国テレビメーカーは群創光電(イノラックス・旧奇美電子)、友達光電(AUO)に発注を切り換える可能性が高い。実際、中国の大手システム組み立てメーカー、恵科電子(深セン)は「韓国からの供給が途絶える恐れがあるため、イノラックス、AUOからの調達を増やす」と表明した。



一方、台韓間で取引関係がある分野には打撃が予想される。鴻海精密工業が組み立てるアップルのiPhone5は、LGディスプレイ(LGD)のインセル式タッチパネルを使用しており、38度線に近い京畿道坡州にあるLGD工場が戦火に遭えば鴻海はパネル調達に不足が出る。また、LGDと関係の深い液晶パネルの瀚宇彩晶(ハンスター・ディスプレイ)、バックライトモジュールの瑞儀光電(ラディアント・オプトエレクトロニクス)は製品を供給できなくなる恐れがある。
ラディアントおよび中強光電(コアトロニック)はサムスン電子にもバックライトモジュールを供給しており、サムスンの忠清南道湯井に位置する第7代・第8代工場に被害が及べば受注を失う。
LED大手、晶元光電(エピスター)によると、韓国は液晶パネルバックライト用LEDで世界最大の市場で、韓国メーカーが生産停止に見舞われれば台湾LEDにはデメリットが大きいとの見方だ。
DRAMは世界最大手であるサムスンの工場が被害に遭えば、台湾メーカーに即座に受注が舞い込むことが考えられる一方、台湾のノートパソコン、タブレット型PC、ハンドヘルドデバイスの生産が、韓国製品の供給停止により悪影響を受ける見通しだ。経済部工業局の連錦?副局長は「台湾メモリーメーカーで生産するほか、日米メーカーから輸入する手段もある」と述べ、万が一世界的に供給不足が深刻化した場合でも台湾メーカーが製品を確保できるよう対策を採りたいの考えを示した。
一方、従来型産業では、石油化学と紡織で恩恵が見込めそうだ。5大汎用石化原料と3大ナイロン原料は台湾と韓国が中国市場でほぼ拮抗(きっこう)しており、韓国の生産量が減れば台湾に受注が舞い込む。