EMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手の鴻海精密工業は17日、マイクロソフト(MS)と特許ライセンス契約を締結した。鴻海はMSにライセンス料を支払うことで、MSとグーグルの特許をめぐる対立に巻き込まれることなく、グーグルのアンドロイドやクロームOS(基本ソフト)搭載スマートフォンやタブレット型パソコンなどを製造できる。鴻海は売上高の3?4割、受注の過半を占めるアップルの成長が減速する中、アップル以外からの受注拡大を目指す。18日付蘋果日報などが報じた。
華南永昌投顧の儲祥生董事長は、鴻海はアップルの成長鈍化を受けてアップル以外の市場を開拓してリスクを分散する必要がある上、アンドロイドOSは現在、モバイル端末の中で最も高い市場シェアを誇ると指摘した
。ただ、アンドロイドOS搭載スマートフォンメーカーは自社製が多く、鴻海がMSと特許契約を結んでもすぐには大きな変化はないとの見方を示した。



 アンドロイドOS搭載スマートフォンのうち、ハイエンド市場はサムスン電子や宏達国際電子(HTC)が握っているが、両社は自社製が中心だ。HTCはかつて台湾の受託メーカーに発注する可能性を示したこともあるが、昨年出荷量が激減したため、当面は外部に生産を委託することはないとみられている。
 ソニーはスマートフォン新機種の出荷量5,000万台のうち2,000台を外部に生産委託しており、鴻海傘下で香
港上場の富士康国際(フォックスコン・インターナショナル・ホールディングス、FIH)がそのうちの半数の受注を獲得した。残りを華宝通訊(コンパル・コミュニケーションズ)と華冠通訊(アリマ・コミュニケーションズ)が分け合っている。
 鴻海傘下で、アップル以外のブランドの製品を受託生産するFIHは、昨年は前年比17.5%の減収(52億3,900万米ドル)となり、純損益は3億1,600万米ドルの赤字に転落した。親会社の足を引っ張らないよう、ス
マートフォンに照準を定めて黒字転換を図る構えとみられている。 マイクロソフトは、FIHの親会社、鴻海と特許ライセンス契約を締結したと発表したが、ライセンス料など詳細は公開していない。鴻海の?治平広報担当も契約内容は明かせないとコメントした。
 証券会社は、以前MSと同様の契約を結んだHTCのライセンス料は1台当たり5米ドルと推測され、受託
メーカーのライセンス料は通常ブランド企業より安いため、鴻海は同3米ドルと予測した。
 市場調査機関、拓ボク産業研究所(ボクはつちへんに僕のつくり)は、グーグルはアンドロイドとクロームOSの特許を保護するため、モトローラ・モビリティを125億米ドルで買収したと指摘。一方、マイクロソフトは特許をめぐりグーグルと直接やり合うのでなく、ブランド企業や受託メーカーからライセンス料を徴収する方法を選んだが、これらのメーカーにとって訴訟よりは受け入れやすいと分析した。
 業界関係者によると、アンドロイドOSはマイクロソフトの特許に抵触するため、HTCのほか、サムスン電子、LGエレクトロニクスなども既に同様の契約を結んでいる。鴻海に先駆け、受託メーカーの広達電脳(クアンタ・コンピュータ)、緯創資通(ウィストロン)なども相次いで締結していた。