ガラスの製造法として大きく分けて、フロート法とオーバーフロー法(フュージョン法とも言う)という二大勢力があります。
フロート法とは、プールのような広さで超平坦度を保った溶解スズの上に溶けているガラスを流し込み徐々に冷やしていって平坦なガラスを作る方法です。
一方オーバーフロー法は、高層階建てのビルの上にある溶解炉から溢れ出たガラスが下に垂れ下がる過程で水飴が固まるのと同じように固めてガラスを作る方法です。溶解炉は溢れた溶解ガラスが幅を持ってカーテンのように垂れ下がるように形状の工夫がされています。(下図)

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静かに開発競争が進行し、両者が自分たちの優位性を主張し、譲り合わずに最後まで自分たちの工法の完成を目指しました。




一例をあげますと、米国のコーニング社は、1984年フュージョン法による最初の無アルカリガラス(コーニング7059)の試作を行い、1980年代のうちに7059ガラス基板(同社の品番)で、アモルファス・シリコン・アクティブマトリクスLCD技術の開発を可能としました。
一方で日本の旭硝子は、従来のフロート法の延長線上で技術開発を進めました。

結果として両陣営ともに量産技術を確立、立ち上がりました。コーニング、日本電気硝子がオーバーフロー法(フュージョン法)を、旭硝子がフロート法を完成させました。

性能も例えば液晶パネルの最終ユーザー、つまりノートパソコンや液晶テレビといった最終製品のユーザーからは全くわかりませんし気にしないと思います。
しかし液晶パネルの量産工場にとっては大きな問題になります。微妙に異なる特性(例えば熱膨張率であったり硬さ=腰の強さであったり)に液晶メーカーは振り回されることになります。
このような基礎的な基板の量産技術が複数実現し生き延びるというのは、あまり無いのではないでしょうか? 
液晶の工場でどちらのガラスを使うかというのが重要な選択になっています。

[参考]「ガラス事業の発展と現状」  株式会社AGC総研