4月24日水曜日の市場取引終了後、半導体大手の米クアルコムが決算を発表した。クアルコムの実績の裏には、アップルやブラックベリー、ノキアにとって悪材料が隠れている。
クアルコムはCDMA(符号分割多元接続)に関連した知的所有権を持つ。この技術は今日使われる多くのワイヤレスネットワークに活用されている。クアルコムはまた、携帯機器向けのチップセットも供給する。CDMA技術をライセンス、あるいはワイヤレス機器やネットワーク基盤の心臓部を幅広く供給しているため、同社の決算にはスマートフォン(スマホ)メーカーの今後を占う様々な材料が含まれる。
売上高は61億2000万米ドルで、前年同期比で23.95%増加した。技術ライセンス収入だけでも前年同期比19%増の21億6000万ドル。1株当たり利益は1.06ドルで、市場予想の1.05ドルを上回った。クアルコムの業績予想も悪くはなかった。第3四半期には、同社は1株当たり利益を0.97~1.05ドルと予想(市場予想は1.04ドル)。売上高は58億~63億ドル(同58億8000万ドル)としている。
■スマホ参入企業40社以上がクアルコム技術を使う
クアルコムは携帯端末分野での優良株だ。ただしこの原稿を書いている時点で、株価は3.79ドル低下している。株価下落の背景にある本当の理由は、スマホの価格が予想をはるかに上回る速度で下落していることにある。特に懸念材料となっているのは、スマホ市場への新規参入企業の多さだ。クアルコムの発表のなかでいくぶん衝撃的だったのは、同社の顧客企業のなかには開発スタートから市場投入まで、最短60日で完了できるところもあるとの内容だ。こうした顧客はクアルコム・リファレンス・デザイン(QRD)という仕組みを利用している。
2013年1月時点で、40社以上のメーカーがQRDを利用した170種類のスマホを売り出している。私が受け取った大量の電子メールを見て皮肉に感じるのは、投資家は米国や欧州での自分の経験に基づいて判断する傾向があり、スマホメーカーが40社以上あると気づいていないことだ。市場投入までの期間が60日というスピードは、従来の9カ月から1年という期間と比べると対照的だ。
■低価格iPhoneが登場してもスマホ価格下落に追いつかない
これはアップルにとって懸念材料だ。先進国の市場はほぼ飽和状態となっており、今後の成長市場は新興国にある。新興国では大多数の人は現行のアップル製品を買うほど可処分所得は高くない。アップルは99ドルアイフォーン(iPhone)の可能性を否定している。であるならば、アップルはすでに低価格帯の携帯電話に力を入れているということだ。未来の低価格iPhoneがいくらになるか誰も知らないが、大方の予想では、現行iPhoneの販売価格が平均613ドルなのに対し、300~400ドルの間になりそうだ。
クアルコムの決算発表を見ると、スマホの価格下落が速すぎて、アップルの新しい低価格帯のiPhoneは競争力を持ち得なさそうだと結論できる。
ブラックベリーは同社の「Z10」が新興国で好調だと盛んにPRするが、Z10は新興国向けとしては高すぎる。ブラックベリーの最高経営責任者は、同社が低価格帯の携帯電話を開発中だという。しかし、スマホ価格の下落スピードの速さを考えると、仮にブラックベリーが現行のZ10の半額で新しい端末を投入できたとしても、市場での競合は難しいだろう。
クアルコムの決算発表によって、ノキアの新興国戦略の正しさが浮き彫りになっている。同社の低価格帯の携帯電話「アシャ」は新興国で好調だが、ノキアも主に中国メーカーとの激しい競争にさらされることになりそうだ。新規参入企業が投入する携帯電話の多くはグーグルのアンドロイドを採用する。さらに、こうした新規参入企業は(米マイクロソフトの)携帯向けOS「Windows Phone」は避けている。
要するに、市場展望の急激な変化はグーグルとクアルコムには好都合だが、それ以外のほとんどの企業には具合が悪いということだ。
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