液晶パネルの中で光を制御する部材として液晶の次に大事なものが偏光板になります。
一般に光は振動方向に規則性が無くランダムな波の集合体です。偏光とは振動方向が規則的な光波の状態を言います。
一般のランダム振動の光が偏光板を通過する際に、特定の方向の振動の光のみ通過させそれ以外の光は吸収(=遮断)してしまうという性能を偏光板は持っています。
そのため偏光板を通過した光は偏光となります。

液晶パネルに使われるようになって偏光板のビジネスも急拡大、現在この市場は、日東電工・住友化学・LG化学が3強で約8割を占められています。



偏光の実用化の歴史は古く、1930年代から偏光レンズで使われています。一般にポラロイドと呼ばれ、偏光板(ポラライザー)とセルロイドの2つの言葉から作られた合成語でポラロイド・コーポレーションの創始者、エドウィン・H・ランド博士によって命名された名称です。
1932年ハーバード物理学専門会議で実用偏光シートの開発として発表され、その後のインスタントカメラに応用され一大事業として発展しました。 

偏光板は、PVA(ポリビニールアルコール)にヨウ素を含浸・染色し延伸した膜を保護フィルム(トリアセチルセルロース:TAC)でサンドイッチした構造を持っています。それが基本構造ですが、さらに表面処理層や接着層が積層され数枚の多層シート構成になっています。
まず偏光子と呼ばれるPVAフィルム、これは元のフィルムがヨウ素に含浸されて延伸された状態のフィルムです。この構造が偏光を生み出します。このフィルムを供給するのはクラレや日本合成化学といった企業です。
その偏光子を機械的に保護しながら光学的に等方性を保つフィルムがTACフィルムというものです。こちらはコニカミノルタや富士フィルム系列の企業が供給元となっています。
さらに表面処理フィルムや位相差フィルムといった光学的なオプションもありますが、これらもほぼ全てが日本メーカーから供給されています。他に必要な材料としては粘着剤やカバーフィルムもあります。
これらは液晶パネルメーカーと切磋琢磨して確立した材料系ですし、いまだにパネルの発展とともにこれらの偏光板とその材料も進化を続けています。
近年韓国や台湾でも偏光板メーカーが創設され量産に入っていますが、フィルムや材料は殆ど100%日本メーカーから供給を受けていると理解いただいて間違いありません。
企業名を見ていてお分かりの通り、以前の写真フィルムの関連メーカーが多いですね。デジカメで消え去った写真フィルムですが、その技術が液晶パネルの偏光板に受け継がれているのです。