鴻海精密工業の郭台銘董事長はこのほど聯合晩報のインタビューに応じ、世界経済の見通しについて、米国、欧州、中国、日本ともに景気が悪く、楽観視できる材料がないと述べた。一方、鴻海自身については「問題は景気ではなく競争力のみ」との従来の立場を繰り返し、需要期に当たる今年の下半期は例年よりも大きな成長を遂げられるとの見方を示した。今年の年成長率目標15%は変わらず、通年売上高は4兆5,000億元(約15兆円)を目指す。24日付聯合晩報などが報じた。
郭董事長は米国は量的緩和政策を縮小する方針を示しており、米国経済の好転を意味すると取れるが、表面的なものにすぎないと指摘した。好転材料として▽量的緩和政策で不動産市場が活気を取り戻し、金融機関が破綻危機を免れた▽実体経済からバーチャル・インターネット経済への転換▽シェールガスの発掘による石油の輸入減少──を挙げたものの、一方では99セントショップが台頭するなど中間層の消費萎縮が見て取れ、米国経済の回復は虚偽だと断定した。
中国については、先日HSBCが発表した6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が48.3となり、前月から0.9ポイント下落して過去9カ月で最低となるとともに、2カ月連続で景況の悪化を示す50を下回ったことから、疲弊していると指摘した。
日本については、安倍晋三首相が打ち出した「3本の矢」に触れ、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」という第1、第2の矢は成果を生んだが、第3の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」は進度が遅く日本経済復興にはっきりとした効果はもたらされていないと語った。
3Dプリンター、「革命は無理」
また、製造業に革命をもたらすとして関心を集める3Dプリンターについては、「革命を起こすなんてあり得ない。滑稽だ」と市場の見方を一蹴した。同社は30年前に既に同技術を使っていたが、3Dプリンターで量産はできず商業価値はないとの見解だ。
液晶テレビ、セブンネットで販売か
25日付経済日報によると、鴻海は液晶テレビ販売で、新たに統一超商(プレジデント・チェーンストア)と提携するとの観測が浮上している。統一超商のインターネット販売サイト「セブン-ネット」で注文を受け付け、台湾全土のセブン-イレブンで商品を引き渡すモデルだ。鴻海にとって、100万人を超えるセブン-ネット会員とセブン-イレブンの実体店舗5,000店が大きな魅力だという。
テレビ本体は統一超商ブランドとし、電源を入れるとセブン-イレブンのマスコットキャラクター「OPEN小将(オープンちゃん)」の画像が映し出されるとされる。サイズは40~70インチで本体のみの販売とみられる。なお、家電業界からは「話題性は大きくても、業界にとって影響は小さい」との指摘が出ている。液晶テレビの場合、消費者は売り場で実際に商品を見て、比較して決めることが多いためだ。
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