シャープは中国で2015年初めにも液晶パネルの合弁生産を始める方針を固めた。現地大手が約3千億円を投じて建設中の新工場に、省エネ性能に優れたスマートフォン(スマホ)向け最新液晶技術を提供し、運営会社に10%弱を出資。生産するパネルの最大半分を引き取る権利を得る。液晶分野での日中合弁は初めて。開発から生産までを手掛ける自前主義を転換、低コストで量産ができる中国企業と組んでパネルの需要拡大に対応、再建を急ぐ。
大型液晶パネルで世界10位の南京中電熊猫信息産業集団(CECパンダ)が南京市で建設する工場に、シャープが省エネ液晶「IGZO(イグゾー)」の技術を供与する。シャープはパンダから数百億円の技術料を受け取り、一部を工場の運営会社の出資金に充てる。
テレビ用パネルもつくる新工場の生産能力は10型タブレット(多機能携帯端末)換算で月約500万台。イグゾーはタブレットやスマホに使う中小型パネルに採用、将来はテレビにも搭載する。
イグゾーはシャープが世界で初めて量産に成功した。従来製品に比べ消費電力が半分以下とされ、電池が長持ちする。タッチパネルの操作性も高い。自社製スマホのほか、米アップル向けなどに受注を伸ばしている。
しかし液晶パネル大手の台湾友達光電や韓国サムスン電子も量産技術を確立しつつあり、シャープが優位を保てるのは2年程度とされる。シャープは中国企業と連携し、最新液晶パネルを低コストで量産する体制を築く方が早期の再建につながると判断、技術流出防止を優先してきたこれまでの戦略を転換する。
米IDCによるとスマホの17年の世界出荷台数は12年の2倍以上となる15億台強。薄型テレビも出荷増が見込める。しかし金融支援を受けているシャープは大規模な投資ができない。パンダの新工場に協力し、資金負担をすることなくパネルを調達して、自社のスマホやタブレットに組み込んだり、外販したりする。
中国では14年以降、液晶パネル工場が相次ぎ稼働する。サムスン、韓国LGディスプレーのほか中国最大手の京東方科技集団や華星光電なども新工場を立ち上げる。パンダはシャープから技術提供を受けて競争力を高めたい考えだ。
シャープは13年3月期に5453億円の連結最終赤字(前の期は3760億円の赤字)を計上した。25日には経営体制を刷新。新たに経営トップに就いた高橋興三社長は液晶事業を再建の柱に位置付けている。パンダとの合弁を通じてパネルの調達量を拡大し、再建を急ぐ。
南京中電熊猫信息産業集団国有電機・IT(情報技術)大手、中国電子信息産業集団(CEC)の子会社。シャープと液晶パネル事業で提携しているほか、IT機器などの製造販売も手掛ける。中国政府はCECを国家のIT戦略の中核企業と位置付けており、今年初めに国有電機大手の彩虹集団を吸収したばかり。年間売上高は約2兆6000億円。従業員は約13万人。
Comment
コメントする