ソニーとパナソニックの有機ELテレビ開発協議が越年する見通しとなった。年内をメドに共同で量産技術を確立するとしていたが、両社の技術の擦り合わせが難航しているため。有機ELテレビは次世代テレビの有力候補とされてきたが、4K液晶テレビが先行。すでに有機ELテレビを商品化している韓国・サムスン電子とLG電子も販売が思うように伸びておらず普及は遅れそうだ。
 両社は2012年6月に有機ELテレビの基幹部品であるパネルの共同開発で合意。「13年内の量産技術の確立を目指し、量産段階での協業の可能性を検討する」とし、定期会合を開いてきた。今年初めに米国で開かれた家電見本市ではパナソニックの試作機の主要部品をソニーが提供した。
 しかし最近は協議が停滞している。ソニーは発光する有機材料を高温で気化させてパネルに吹き付ける「蒸着方式」と呼ばれる製造技術を持つ。一方、パナソニックは印刷技術を応用して有機材料をパネルに塗布する「印刷方式」という製造技術を開発している。



 ソニーは蒸着方式と印刷方式を組み合わせた生産を提案。パナソニックは印刷方式への一本化が効率的としたが、折り合いがついていないもよう。今月、日本で開かれた家電見本市で展示されたパナソニックの試作機にソニーからの部品供給は見送られた。
 協議停滞の背景には有機ELテレビを取り巻く環境の変化もある。フルハイビジョンの約4倍の解像度を持つ4K液晶テレビが普及。当初は1インチあたり1万円以上した価格が直近では同6千円前後に下落した。一方韓国や米国などで販売するサムスンやLG製有機ELテレビ(日本では未発売)は日本円換算で1インチ2万円前後。4Kとの価格差は広がり、「韓国2社の有機ELテレビの損益は赤字」(関係者)。
 このためソニーとパナソニックは有機ELテレビよりも4K液晶テレビの開発や販売を優先する構え。ただ「他の製品でも協力しているため決裂は避けたい」(ソニー幹部)としており、来年以降の共同開発について協議を始めた。
 量産段階での協業も当面は見送る可能性が高い。ソニーは有機ELテレビの生産を台湾の液晶パネル大手、友達光電(AUO)と共同で進める案を軸に検討する。パナソニックは医療機関向けなど業務用製品を15年度までに商品化する方針。生産を自社で手掛けるか委託するかは今後詰める。