半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)世界最大手、日月光半導体製造(ASE)が高雄K7工場から基準値以上の有害物質を含んだ排水を垂れ流し、しかも水道水で希釈した排水をサンプルとして提出していたとして、高雄市政府環境保護局(環保局)は9日、行政罰で最高額の罰金60万台湾元(約210万円)を科し、操業停止を命じる方針を発表した。K7工場は通信製品用IC封止を手掛け、同社生産能力の28%を占める。
操業停止になった場合、再開までに半年以上かかり、サプライチェーンの影響は計り知れない。10日付聯合報などが報じた。
操業停止になった場合、再開までに半年以上かかり、サプライチェーンの影響は計り知れない。10日付聯合報などが報じた。
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高雄市環保局は10月1日、後勁渓(高雄市楠梓区などを流れる全長21キロメートルの河川)で異常な水質の排水を発見し、加工出口区(輸出加工区)楠梓園区のASE高雄K7工場が排出源と突き止めた。K7工場の地下の排水槽を調べたところ、pH値2.63(酸性が強い)、ニッケル含有量4.38ミリグラム/リットル(mg/l)など水汚染防治法第7條第1項に違反する結果を確認した。
ニッケルは行政院環境保護署(環保署)が肝臓、腎臓を傷付ける恐れがある有害物質に指定しており、排水の基準値は1mg/lだ。排水地点から1.5キロ下流には台湾高雄農田水利会の取水口があり、橋頭区、梓官区の農地940ヘクタールのかんがい用水に利用している。
市環保局の楊漢宗稽査科長は、昨年7月の検査ではASEが1階に設けたサンプル専用排水槽から取水させたため、違反の数値が出なかったと語った。今回の検査でも1階のサンプル専用排水槽ではpH値7.06など、検査数値に大きな差が出ている。
高雄市環保局は、ASEは著名な上場企業で、排水処理施設を担当する専門の部署と担当者を設けているにもかかわらず、水道水で希釈した専用の排水槽からサンプルを提出したと指摘した。ASEは事実と認めていないという。
陳金徳局長は、ASEの違反による処罰は3年連続で、改善も見られず、状況は深刻だと語った。同局は、ASEに10日間の意見陳述の期間を与えるが、水汚染防治法第40條に基づき罰金60万元と操業停止命令を下す方針だ。
その場合、ASEは操業再開計画書を提出した上で、排水設備を改善し、機能評価検査で15日連続で採水が合格しなければ操業を再開できない。少なくとも半年はかかるとみられる。
ASEは、同日中に管理と設備を改善したと表明、汚水を垂れ流すような悪意は全くないと強調した。K7工場は現時点で操業を停止していない。
K7工場は従業員5,000人、月間売上高は7,500万米ドルでASE集団の1割を占める。アップルのWi-Fiモジュールの受注で、ASE集団の11月連結売上高は前月比5.8%増の219億7,400万元で過去最高を再更新した。ASE集団は世界市場シェア20%で、工場15基を有する楠梓園区の高雄工場区が最大の生産拠点だ。顧客は台湾積体電路製造(TSMC)、聯発科技(メディアテック)などで、今回の事態を受けて同業の?品精密工業(SPIL)に受注がシフトする可能性がある。
同日付蘋果日報は、台湾の自然や人々の暮らしをヘリコプターで上空から撮影したドキュメンタリー映画『看見台湾』で、もともと美しかった後頸渓が工業用水で黄土色に変わり、海に流れ込んでいたと指摘した。
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