半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)最大手、日月光半導体製造(ASE)の高雄K7工場が有害物質を含む排水を垂れ流していたことを確認した高雄市政府は10日、ASEに対し不当利得の返還を請求し、高雄地方法院検察署(地検)より公共危険罪の疑いで張虔生董事長に対し刑事責任を追及する方針を示した。ASEは同日夜の謝罪会見で同様の問題を再発させないと誓ったものの、高雄市は10日以内にK7工場の操業停止を正式に命じる構えで、創業以来最大の危機に直面した。11日付工商時報などが報じた。

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高雄市政府環境保護局(環保局)は、K7工場の排水がpH値2.63(標準は6~9)、有害物質のニッケル含有量4.38ミリグラム/リットル(mg/l、標準は1.0mg/l)など水汚染防治法第7條第1項に違反する他、刑法190條之1の一部に抵触する可能性があると検察への捜査依頼理由を説明した。刑法190條之1第2項には、会社、事業所の責任者、監督者は事業活動で前項の罪を犯した場合に7年以下の有期刑を科すると規定されている。
高雄市環保局は、ASEの不当利得は行政罰法18條に基づき、排水の未処理の費用を計算して請求すると説明した。最高で2006年まで遡及(そきゅう)請求できるが、期間や金額は行政院環境保護署(環保署)と相談の上で確定する。ASEは11年8月から12年9月まで、放出基準に達していない汚水を後勁渓(高雄市楠梓区などを流れる全長21キロメートルの河川)に流したことで、計5回の罰金処分を受けている。
沈世宏・環保署署長は、今回の問題での高雄市による罰金60万元は行政罰で最高額ながら低過ぎ、操業停止命令や不当利得の返還請求など重罰を与えなければ抑制効果がないと指摘した。
張董事長は9日夜、深刻な事態を受けて上海から台北に急きょ戻り、幹部を召集して対策を策定した。ただ、10日夜の謝罪会見には姿を見せなかった。
呉田玉営運長(COO)は会見で、社会に不安を与え、高雄市環保局の検査員にも迷惑を掛けたと謝罪した。同社は高雄市環保局に改善計画を提示して説明を重ね、K7工場への操業停止命令を阻止する構えだ。
董宏思財務長(CFO)は、「故意」「悪意」は全くなく単なる過失で、管理システムや排水処理施設を全面検査して既に改善措置を施しており、同様の問題はもう起こさないと誓った。羅瑞栄高雄工場区総経理は、同社で調査し担当者を処罰しており、再び誤ちが起きれば自身が責任を取ると述べ、再発防止を約束した。
業界関係者は、K7工場に操業停止命令が出れば、高雄工場の受注の約半分がストップするに等しいと述べた。
高雄工場のある従業員は、操業停止となれば需要期ならば他の工場に支援に行くことになるが、現在は非需要期なので無給休暇を強いられるかもしれず、どのような気持ちで春節(旧正月)を迎えればよいのかと話した。
環境保護団体は、ASEの罰金は軽過ぎ、租税優遇措置30億元を全額返還するべきだと訴えた。
橋頭区農会(農協)は、現在はちょうど休耕期に当たるため、農地の5ヘクタールでブロッコリーやキャベツを作っているだけで、地下水を利用しており後勁渓からは注水していないと説明した。今後、農地の汚染が確認されれば、農家の損害賠償請求を支援すると強調した。
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