
パソコンブランド大手、宏碁(エイサー)の陳俊聖・世界総裁兼執行長(CEO)は13日就任記者会見を行い、今後の経営再建方針について、パソコンなどのハード製品の販売台数、シェアをやみくもに追求せず、クラウドサービスに注力する方針を示した。クラウドで端末ごとのデータ連携の充実を図り、スマートフォンを含めたハード製品の販売増につなげる考えとみられるが、同様の発想は既にアップルなどが実行しているため後追い感が否めず、エイサー再建の切り札になるとは考えにくい。14日付工商時報などが報じた。
陳総裁は、本格的に新体制が始動するのは4月1日からで、ハード、ソフト、サービスの一体化を図ること、中堅・末端従業員を対象に昇給を実施することも説明した。

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陳総裁はエイサーについて、一般的には「時代遅れ」と見られているかもしれないが、「イノベーションを求め、リスクを恐れていない」と評した。ただ、ここ2年はウルトラブック(超薄型軽量ノートPC)やタッチパネル搭載機種などの研究開発(R&D)に注力し過ぎたと指摘。方向性は正しかったが、市場に先行し過ぎたために損失やリソース浪費を招いたと分析した。市場シェアを安定させた上で進むべき方向を把握することが自身の最初の任務とした上で、ハードの販売はあくまで過程にすぎず、クラウドサービスに重点を置き、組織、製品などもクラウドに沿って進めると語った。研究開発(R&D)の拡大も視野に入れる。エイサーは既に▽データセンター(宏碁電子化資訊管理中心、Acer eDC)▽データセキュリティー管理能力▽成功事例──の3要素を有しており、クラウドサービス展開では海外市場も狙えると自信を見せた。
また、ブランドは信頼50%、尊敬10%、好み40%の3要素から成り立っているとの見方を示し、エイサーは信頼は十分得ているが、尊敬、好みの部分を強化する必要があると述べた。
同席した施振栄董事長は陳総裁について、就任前の昨年末から出勤するなど、真面目な態度に感心させられたと説明。エイサー再建という難題に取り組まなければならないが、「10年以上はエイサーを引っ張っていてもらいたい」と期待感を示した。
エイサーは昨年、王振堂前董事長兼執行長が業績不振で引責辞任。一刻も早い経営再建が叫ばれている。同社はかつて2度の経営危機に迫られた経験を持つ。PC産業が「小規模生産、高利益」の時代から大量生産へ転換の際に大幅損失を計上した1993年と、米国でのブランド業務および投資していた徳碁半導体が赤字に陥った2001年だ。しかし、それぞれ組織改革や世界展開およびブランド業務と受託業務を分社化し、独立経営とするなどで見事再建を果たした。
ただ、今回は本業のPCが市場減退期を迎えたという点で前2回とは危機の質が異なっており、台湾積体電路製造(TSMC)幹部出身の陳総裁が「第3の経営再建」を果たせるか、見通しは決して明るくなさそうだ。
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