鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長が出資する堺ディスプレイプロダクト(SDP、旧シャープ堺工場)は、第10世代液晶パネル生産ラインの月産能力を年末までに12万枚(ガラス基板ベース)へと現状の8万枚から5割拡大する。大型液晶パネルの供給過剰が叫ばれる中、台湾系メーカーでは久々の大規模投資で、高解像度4K2Kパネルの生産拡充との見方の他、アップルのスマートテレビ「iTV」への供給準備との観測も出ている。22日付工商時報などが報じた。
 SDPの投資額は数百億台湾元(1元=約3.4円)に上るとみられる。同社は昨年にも184億円を4K2Kパネルの設備投資に充てた。同社が液晶パネルを供給する米ビジオは昨年、米国液晶テレビ市場が前年比3?4%縮小した中で同17~18%の成長(販売台数640万台)の成長を遂げており、SDPの設備投資は大型テレビ市場の成長に期待してのものとの見方がある。 
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一方、大型パネルが供給過剰となっている中で、常識外の投資との受け止め方もある。台湾パネル2強の友達光電(AUO)と群創光電(イノラックス)は近年、大型の設備投資を控えてきたが、京東方科技集団(BOEテクノロジーグループ)など中国メーカーが依然設備投資に注力しているため供給過剰が深刻化している。こうした中、現状で設備稼働率が85%のSDPが生産能力を拡大すれば、市況の悪化に拍車が掛かり、同じ鴻海グループのイノラックスやAUOが最初に影響を受ける懸念があるとされる。
 このため台新投顧の黄文清総経理は、まず状況が定まってから対応を行ってきた郭董事長の従来の手法から、既に供給先の見通しを立てていると考えられること、およびSDPがハイエンドパネルを製造することから、アップルのiTV向けに供給を行う可能性があると指摘した。
 SDPは郭董事長の投資会社とシャープが各37.61%を出資して共同運営し、世界で唯一の第10世代パネル工場を擁する。昨年は60億円の利益を挙げて黒字転換を果たした。生産能力の増強により今後2年間は利益拡大が続き、既定の2016年の上場目標に向かって進むとの予測もある。 
鴻海は21日、2月に迎え入れた呂学錦・元中華電信董事長が既に離職したとの市場観測を否定した。現在、鴻海が慰留の説得に当たっていると伝えられる。鴻海は第5世代移動通信システム(5G)以降を見据えた技術や特許、人材育成を担当する「鴻通韜略発展中心(戦略発展センター)」を設立して呂氏を院長に迎えたが、業界関係者は、呂氏が離職する場合は韜略中心を残すかどうか郭董事長の知恵が試されると指摘した。