サムスン電子は有機ELテレビへの投資をついに中断しました。専用パネルの量産ラインを2014年中にも設置する計画でしたが中止しました。
製品の仕上がり・歩留の低迷などから合理的な判断とはいえ、液晶の次世代テレビとして「有機EL」を排他的にけん引し市場制覇を目論んできた第一人者の挫折は大きな影響を引き起こすと見ています。
徐々に雲行きが怪しくなってはいたものの、ついに投資中止という烙印が押されてわけです。では何年後に投資再開となるのでしょうか?
管理人の見立てでは時間の問題ではなく、基礎技術ベースの問題のためいつになるか分からないと考えています。
現時点、顧客基点で見た場合に有機ELテレビでなければならないという論拠もなければ、経済性でも液晶を凌駕できない商品で留まっているのです。
以前もここで書きましたがこれらを解決する大きな技術的ブレークスルーが必要なのです。
つまりそのブレークスルーが無い限り、投資うんぬんの話ではなく有機ELテレビ事業そのものが成り立たず液晶テレビが有機ELテレビに置き換わる日は来ないのです。
では、そのフレークスルーとやらはいつ来るの?? という疑問があるかと思いますが、こればっかりはわかりません。明日かもしれないし10年後かもしれません。
管理人の見方としてはかなり悲観的で最悪永久に来ない可能性(液晶の次は液晶)もありえると思っています。

今回のニュース、業界に与える影響はかなり大きく、その中で以下の3点指摘させていただきます。(ところでソニーも有機EL開発中断...しました...→話題性ゼロです。もともとたいしたことしていない)

①有機EL材料・装置メーカーの落胆
②サムソン社内での発言力低下
③スマートフォン有機EL継続への疑問

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①について、面積ベースで見るとテレビはやはり一番重要な事業です。
有機ELテレビの実現を夢見て材料メーカー・装置メーカーは盟主サムソンに従ってきました。
いずれもいつの日か液晶テレビが有機ELテレビに全面的に切り替わるというご主人様と同じ野望で開発に励んできたのですが、これに疑問符がついてしまいました。テレビがダメで今の小型向けだけだと量的に厳しいと思います。
まぁ材料屋さん・装置屋さんは気が長いので、少しの可能性でもある限りついていくとは思いますがその熱意は低下していくと思います。

②サムソン社内での発言力低下
有機ELテレビ化という大きな方向性で社内の流れをリードしてきたと思いますが、これが途絶えることになります。
もともとそれに懐疑的な勢力もいたでしょうから、この力関係が崩れるでしょう。
こういった場合トップのリーダーシップが必要なのでしょうけど、今のサムソンはまとめていけるのでしょうか?

③スマートフォン有機EL継続への疑問
スマートフォンにいまだに有機ELを使っていますが、それが差別化につながっているか明確ではありません。スマートフォン向け液晶がどんどん進化しているのにたいして、最近あまり有機ELの目立った製品開発が見えていません。
サムソンは新興国向けスマートフォンにはTN液晶まで使っています。いつまでスマートフォンに有機ELを使っていくのか、疑問の声が高まるのではないでしょうか?


消去法で有機ELの行く先はフレキシブルということになるわけですが、これがどのくらい技術的な課題を持っているのか、適用製品がどのくらいの市場規模を持っているのか、管理人は知見が乏しいのでこれからもっと勉強しなければならないと思っています。
頑張ってほしいものです。


記録がてら有機EL用材料・製造装置(日本企業)を列記しておきます。

[有機EL材料]
 出光興産
 住友化学
 東ソー
 東レ
 保土谷化学工業
 Novaled/丸紅メタル
 新日鉄住金化学
 ナガセケムテックス
 スリーボンド
 ダイニック
 日本ゴア
 双葉電子工業

[有機EL用製造装置]
 アユミ工業
 アルバック
 エイエルエステクノロジー(昇華精製装置・蒸着装置)
 協真エンジニアリング(昇華精製装置)
 クリーン・テクノロジー(IR/UV/CP装置)
 光洋サーモシステム
 サムコ (CVD装置)
 JSWアフティ (成膜装置)
 清和光学製作所 (露光装置)
 大日本科研 (封止装置)
 東芝機械 (ナノインプリント装置)