液晶ディスプレーのバックライトにおける量子ドットは、数n~数十nmの大きさを持つCd系の化合物半導体の微粒子である。その役割は、一般的な蛍光体と同様に青色LEDからの光の波長変換を行い、望む色の光を得ること。蛍光体と違うのは、量子ドットの粒子(結晶)の大きさによって、光の色を、長い方の波長であれば自在に制御できることだ。この特徴を利用し、大きさの異なる2種類の量子ドットを用いることで、青色LEDの光から赤色光や緑色光を得られる(図-a)。55zua01

蛍光体も量子ドットも、青色LEDからの光によって励起された電子のエネルギーが伝導帯から価電子帯に戻るときに、バンドギャップに対応したエネルギー、すなわち波長の光を放出する点は同じである。異なるのは、蛍光体では組成によってバンドギャップが決まるのに対して、量子ドットでは粒子の大きさによってバンドギャップが決まることだ。粒子が大きいほどバンドギャップは小さく、放出される光の波長は長くなる(図-b)。米3M社によると、青色LEDからの光を赤色に変換するための量子ドットの粒子径は約7nm、緑色に変換するための量子ドットの粒子径は約3nmである。

保存

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広色域と低消費電力を両立できる量子ドットを組み込んだバックライトとしては、現在、二つの方式が量産化されている。
57zu05保存一つは、バックライトの導光板の端面(側面)に沿って量子ドットを実装する「オンエッジ方式」である。数n~数十nm径の粒子である量子ドットを数mm径のガラスチューブの中に入れて封止し、これを青色LEDと導光板の間に配置する。青色LEDからの光がガラスチューブに照射され、そのうち量子ドットに衝突した青色光が緑色光や赤色光に変換される。

 オンエッジ方式は、大画面でも量子ドットの使用量を少なくできる利点がある。ソニーが液晶テレビに採用したのは、この方式だ。

 もう一つは、導光板の上に量子ドットを載せる「表面実装方式」である。量子ドットを樹脂に分散させてシート化し、これを2枚のバリアーフィルムで挟んで封止した量子ドットフィルムを、導光板の上に敷く。バリアーフィルムは、水や酸素による量子ドットの劣化を抑える役目を担う。青色LEDはオンエッジ方式と同様に、導光板の端面(側面)に置く。青色LEDからの光は導光板に入って面状の青色光となり、これが量子ドットフィルムを照射する。

 表面実装方式の特徴は大きく二つある。一つは、青色LEDの光が導光板を経て量子ドットに当たるため、LEDからの熱の影響が少なく、信頼性を確保しやすいこと。もう一つは、フィルム状のため、小型から大型までの幅広い画面サイズに対応しやすいことである。