青色発光ダイオード(LED)の開発に向け、ノーベル物理学賞を受賞する赤崎勇・名城大教授(85)、天野浩・名古屋大教授(54)の2人と共同研究した豊田合成(愛知県清須市)の幹部が、10日の授賞式に招かれた。共同受賞する中村修二・カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(60)がいた日亜化学工業(徳島県阿南市)とはかつて、青色LEDの特許をめぐって泥沼の係争となった。3人そろっての晴れ舞台を前に「こんな日が来るとは」と感慨にふける。
 授賞式に出席するのは、荒島正社長と太田光一顧問。太田さんは青色LED関連の特許取得を担当した後、日亜側との訴訟でも証拠書面作りに奔走した。
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 豊田合成が日亜側から最初に提訴されたのは、1996年8月だった。赤崎さん、天野さんとの共同研究開始から既に10年がたっており、主要技術の特許の 取得も終えていた。だが、中村さんが91年、世界で最も明るい青色LEDの量産化技術を開発し、日亜側は93年に製品化で先行。競い合う中で、細かな技術 について互いに「特許を侵害している」と主張し、40件超の係争を抱えた。
 太田さんは、窒化ガリウムの結晶化について、赤崎さんと天野さんの研 究成果であることをまとめた再現ビデオを製作。「書面だと厚さ10センチ以上の膨大な量。細かく見てもらえないだろうから、映像にした」と話す。映像製作 会社に編集を依頼し、ナレーターには東京のテレビ局のアナウンサーを使うなど、力を入れた。ビデオを提出した直後、裁判所は日亜側に和解を進言。2002 年に、双方がすべての訴訟を取り下げることで和解が成立した。
 太田さんは、裁判所で中村さんと何度も顔を合わせた。印象は「素朴で、腰の低い 男」。その功績を「研究開始から数年で量産化技術を開発したスピード感は立派」と認める。だが「最初に実現した赤崎さん、天野さんの技術が基になったとい うことを忘れず、より敬意を払ってほしい」と付け加える。
 和解の数年後、中村さんから豊田合成に共同研究の打診が2度にわたってあったが、断ったという。太田さんは、微妙に残るしこりが10日の授賞式で解消されることを願っている。