液晶パネル世界最大手の韓国LGディスプレーはテレビ用有機ELパネルの新ラインを月内にも稼働させ、生産能力を約4倍に増やす。有機ELは液晶に比べ豊かな色彩表現ができる。コストが高いためサムスンが生産を中断するなど他社は様子見状態だが、中国勢の追随を受ける液晶への依存脱却を目指し投資を拡大する。
 新ラインは韓国北西部の坡州(パジュ)工場内に約7000億ウォン(約760億円)を投じて建設中だ。8.5世代(2200ミリ×2500ミリ)と呼ぶガラス基板を月に2万6千枚処理できる。仮に55型テレビ用のパネルだけをつくる場合、10万台分以上をつくれる計算になる。
 有機ELパネルは映像表示の仕組みが液晶とは異なり、コントラスト(明暗比)など画質が優れているのが特徴だ。スマートフォンではサムスン電子が主力製品に使っている。
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 ただ、テレビ用の大型パネルは生産が難しく、良品率が低いため価格も高い。LG電子が9月に発売した有機ELテレビは55型の同社製品で過去最低価格の約40万円だが、液晶テレビは機能次第で10万円台もある。

  サムスンは一時、テレビ用パネルも生産しており2014年中に大規模ラインをつくる計画だったが、価格競争力が低いなどの理由で投資を中断した。日本では ソニーが07年に11型テレビを発売したことがあるが、大型パネルの具体的な量産計画はない。LGは独自のパネル構造や生産技術を使うことで比較的高い良 品率を実現している。

 最大のリスクは有機ELテレビ市場がまだ極めて小さい点だ。米ディスプレイサーチによると14年の市場規模は10 万台。15年も60万台とテレビ全体の0.3%にとどまる見込み。液晶テレビも画質や価格などの面で進化が続いており、LGの狙い通り普及が進まなければ 新ラインは過剰投資になりかねない。

 それでもLGが積極姿勢をとるのは、液晶パネルで中国メーカーの激しい追い上げが予想されるから だ。中国では今後数年で多くの新工場が稼働する計画だ。LGはシェア縮小や価格下落を通じて業績が悪化しかねないだけに、液晶パネルで高機能品へのシフト を進めると同時に新分野にも投資する。

 LGディスプレーは有機ELパネルを主にLG電子に出荷してきたが、既に一部取引がある中国スカイワースなど外部のテレビメーカーへの供給も今後は拡大する方針だ。生産コストの削減に加え、多様なメーカーの参入が有機ELテレビ市場の早期拡大につながるとみるためだ。