ソニーとパナソニック、ジャパンディスプレイ、産業革新機構が共同出資する有機ELパネル開発会社JOLED(ジェイオーレッド、東京・千代田)は2017年にも中型パネルを量産する。薄い、軽いといった特長を生かしてノートパソコンやタブレット(多機能携帯端末)への採用を目指す。韓国勢が先行する市場でどう巻き返すか。東入来信博社長に戦略を聞いた。

 ――新会社が1月にスタートしました。

 「ソニーとパナソニックの研究開発部門を統合してスタートした。両社が研究を続けてきた財産をすべて引き継いだ。技術的にはほぼ最終段階だ。私の役目は最後までやり抜くことだ」

 ――事業化のスケジュールを教えて下さい。

 「6月に試作ラインへの投資を決める。投資額を最小限に抑えるため、ジャパンディスプレイの拠点活用も考えている。16年秋から量産へ向けて歩留まりなど生産技術の検証を始める。17〜18年に量産する計画だ。この2年が勝負だ」

 「有機ELは薄い、軽い、曲げられるという特徴がある。特徴を最も生かせる中型でイノベーションを起こす。有機ELパネルの世界市場は20年に250億ドルとなり、うち60億ドルが当社が狙う中型だ。いずれは大型テレビ向けもやりたい」
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 ――これまで単独で事業化できませんでした。統合して成功しますか。

 「パナソニックは有機材料を基板に塗布する印刷方式を突 き詰めてきた。韓国企業の蒸着方式に比べ材料のムダが少ない。真空装置も不要でコスト競争力がある。ソニーの駆動用半導体は消費電力が少ない。有機ELは 日本人が得意な『擦り合わせ』の世界だ。素材も製造装置も日本にある」

 「今までは大きな会社の中で(業績悪化など)様々な都合で有機ELの優先度が下がり、開発がスローダウンした。JOLEDは有機ELのためだけの会社だ。朝起きてから寝るまでこれだけに集中する」

 ――資金をどう手当てしますか。

  「株主4社の合意で開発と試作ラインに必要な資金はすでに手当てされている。(革新機構やジャパンディスプレイの追加出資で)数百億円の上のほうの資金を 使える。量産投資のためには株式上場するか、ジャパンディスプレイが当社を取り込み自分で手掛けるか、様々な選択肢がある」

 ――組織の融合にどう取り組みますか。

  「JOLEDは技術者が集まってできた。お互いの技術が優れていると分かれば納得する。統合して機密情報が開示され、腹に落ちた。社内では、無理して一緒 になることはないが目標は共有してほしいと呼びかけている。お互いのDNAを尊重し、意見をぶつけ合ってほしい。その中からいい物が出てくるはずだ」

 ――社長就任の打診はいつごろありましたか。

  「昨年の春先に話があり最初は悩んだ。『本当に大丈夫か』とよく言われる。最後は日本のためにと引き受けた。新会社が雲散霧消すれば技術も海外に流出して しまう。私自身、液晶業界に20年間身を置き有機ELの難しさもよく分かっている。失敗したらどうしようと考えるのではなく『成功するために時間を使え』 と発破をかけている」

 JOLED 官民ファンドの産業革新機構の旗振りでソニーとパナソニックの有機EL開発事業 を統合した。ジャパンディスプレイも出資し、今年1月に事業を始めた。従業員は約260人で、神奈川県厚木市と京都市に開発拠点を持つ。東入来信博氏は日 本鉱業(現JX日鉱日石金属)で液晶検査装置事業を立ち上げ、イスラエル企業との検査装置合弁の日本オルボテックのトップからJOLEDに転じた。