lgoled-tv“ポスト液晶パネル”と期待されている「有機EL(エレクトロルミネッセンス)」で新しい動きが出てきた。石油元売り大手の出光興産が韓国のLGディスプレーと有機ELで手を組んだのだ。
出光が持つパネル製造関連の特許をLGに供与し、LGがテレビ向けの大型パネル生産などに活用するという内容。有機ELは液晶と比べ、より薄く画質が鮮明といった特徴があるが、コスト高などの問題から劣勢を余儀なくされている。異色の“日韓タッグ”は市場を切り開くことができるのかー。
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■液晶より薄く画質も鮮明
 「液晶の次は有機ELの時代がくる」。出光の首脳は有機ELへの期待をこう強調する。
 有機ELは電 圧をかけると発光する有機物でできた電子材料。液晶が画面の背後に光源が必要なのに対し、有機ELは材料そのものが発光するため、液晶パネルよりも薄く、 折り曲げたりもできる。画質が高く消費電力も少なくてすむことなどから、今後はテレビ向け大型パネルの材料などとして注目されている。
 出光は多 角化の一環として1970年代から、本業の石油事業以外の分野でも基礎研究を進めてきた。「その中でも有望だった」(出光幹部)のが有機ELだ。1985 年には有機EL用の発光材料の開発をスタートさせた。現在は製造から販売までを手掛け、工場は日本と韓国にある。
 出光が石油事業以外にも力を入 れる背景には、石油需要の減少がある。省エネや低燃費車の普及などで、ガソリンを含めた石油製品の国内需要は1999年度の2億4597万キロリットルを ピークに減少傾向をたどり、2012年度には2割少ない1億9752万キロリットルまで減少した。政府の試算によれば、18年度にはさらに1割程度減る見 込みだ。
 石油需要の減少を見据え、業界では再編の機運も高まっている。石油元売り2位の出光は5位の昭和シェル石油を買収する方向で、交渉を進めている。業界再編を優位に進める上でも、収益力の底上げは欠かせないわけだ。
出光は有機EL材料をディスプレー製造会社に供給し、あくまでも素材メーカーとして事業を強化する考えだ。このため、ディスプレーの生産を手掛ける電機メーカーとの提携は欠かせない。
  そこで目を付けたのがLGだった。出光が提携先として日本メーカーではなく、韓国のLGを選んだのには訳がある。LGは2013年に世界で初めて大型の有 機ELテレビを発売するなど、同分野を積極的に展開し、市場をリードしてきた。これに対し、日本の電機メーカーは、有機ELテレビに対し一定の距離を置 く。その代表例がソニーだ。
 ソニーは07年に世界で初めて11型の有機ELテレビを発売した。だが、約20万円という高価格などがネックとなり、10年に国内販売を中止。現在は業務用モニターに限って事業を継続している。
 テレビ用の有機ELパネルをめぐっては、ソニーとパナソニックが12年に共同開発で合意した。しかし、13年末には提携を解消している。有機ELに積極的な韓国勢に対し、日本メーカーの戦略は対照的だ。
 日本メーカーがテレビ用有機ELに冷ややかなのは、「液晶に価格で太刀打ちできない」(大手電機幹部)などと、市場規模の拡大に懐疑的だからだ。
  フルハイビジョンの約4倍の解像度を持つ「4K」に対応した液晶テレビが市場に出回るなど、画質と価格面で成熟度を増す液晶テレビの牙城を崩すのは容易で ない。言い換えれば、国内メーカーが有機ELパネルに及び腰の中、LG以外に“お得意さま”が見つからなかったといっていい。

■限られた“お得意さま”
  米ディスプレイサーチによれば、14年の液晶テレビの出荷台数は2億2486万7000台に対し、有機ELテレビはわずか7万7000台と、テレビ全体の 0.03%に過ぎない。今後、伸びが見込めるとはいえ、有機ELテレビの19年の出荷台数も700万台と、全体の2.7%にとどまると予想されている。
  一方、有機ELはテレビ向けパネルの材料だけでなく、照明用としても期待されていた。実際、出光はパナソニックと照明用有機ELパネルの製造などを手掛け る共同出資会社を設立していた。しかし、昨年3月末、共同出資会社を清算。LED(発光ダイオード)照明の普及で、有機ELの市場拡大が見込めないと判断 したからだ。
 LEDを液晶と置き換えれば、テレビ用の有機ELパネルの今後も楽観視はできない。
 有機EL材料の将来は、同材料を使ったテレビ用パネルなどデバイス(部品)の普及にかかっている。出光は有機ELパネルに力を入れるLGと組んで普及を後押しする考えだが、市場が広がらなければ、再び提携解消を余儀なくされる危険性もはらんでいる。

(Original Source: IT media News)