日東電工の高崎秀雄社長は、ロイターとのインタビューで、主力の液晶用光学フィルムについて、今後も一段の拡大を見込む考えを示した。顧客の液晶メーカーの競争が激化する中で最先端技術による独自部材の開発を続け、液晶部材事業の成長を維持する構えだ。
一方で、同事業に依存しない体質を構築するため、今後3年で新規分野への投資を積極化し、収益源の多様化を図る方針を改めて示した。
同社の液晶用光学フィルムは、独自技術を使った業界最薄の偏光板が最先端スマートフォン(スマホ)向けに伸びている。このスマホ向けの偏光板は今期からテレビ向けにも供給する。スマホより大画面のテレビの液晶に供給されれば販売量が増える見込み。
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高崎社長は「テレビ市場は縮小していても製品の進化は続いている。3年前からスマホで強みを出してきた偏光板が、最先端のテレビで価値が認められた」と述べ、液晶の市場動向に左右されない持続的な成長に自信を示した。

液晶部材では、タッチパネルセンサーに使うITOフィルムも主力製品。スマホ用の中小型液晶ではタッチパネル機能を内蔵する「インセル型」も増えており、フィルム型に対抗する市場を形成している。

ITOフィルムの事業環境について、高崎社長は「タブレット端末が伸び悩んでいるので若干下がっているが、タッチパネルではまだフィルムセンサーが主流。インセルとの市場の棲み分けはできる」と強調した。

現 在は、同社の連結売上高の50%超を液晶部材(情報機能材料)が占めており、営業利益の大半を稼ぐ構造。2015―17年度の中期経営計画では3500億 円の成長投資枠を設定した。環境、新エネルギー、医療の分野で設備投資やM&A(合併・買収)を積極化することで「全体のポートフォリオを変えていく」 (高崎社長)。

成長分野として注力する自動車向け材料は売上高が前期に1000億円を初めて突破。17年度には1500億円にする計画。 工業用ゴムなどの既存製品を国内自動車メーカーだけでなく、海外メーカー向けに伸ばすとともに、自動車のエレクトロニクス化の波に乗って新開発の材料の採 用を増やしていく。

高崎社長は「自動車の運転席周りがディスプレイになれば、得意の偏光板の技術が使える。自動車のエレクトロニクス化はすべての既存事業にチャンスがある」と強調した。

一方で、「情報機能材料に頼らない体質に変えていくが、情報機能材料の手は抜かない。圧倒的ナンバー1の技術を維持し、新製品をしっかり出していく」と述べ、今後も液晶部材の拡大に力を入れる考えを繰り返し強調した。

2015 年3月期の営業利益は前年比47.2%増の1067億円で過去最高益を確保。円安進行に加え、米アップルや韓国サムスン電子 、中国小米科技などハイエンドのスマホの伸びを背景に、日韓の液晶メーカーがスマホ向けパネルの生産を増やし、同社の液晶用光学フィルムが堅調だった。 16年3月期も過去最高益を更新する計画で、営業利益率は13.8%(前期は12.9%)を狙う。