ミネベアがこの夏、新事業に乗り出す。2016年3月期には3年連続の最高益更新を狙う勢いを駆って、どんな高収益事業に参入か……と、思いきや「費用対効果が悪く、引き受けたがらない部品メーカーが多い」という分野だという。
スマートフォン(スマホ)向けモジュール(複合部品)事業だ。既存の複数部品を使った「組み立て」作業で、特に目新しいものではない。会社側による利益貢献見積もりも「ゼロではない」との控えめさだ。では何を狙って参入するのか。
スマートフォン(スマホ)向けモジュール(複合部品)事業だ。既存の複数部品を使った「組み立て」作業で、特に目新しいものではない。会社側による利益貢献見積もりも「ゼロではない」との控えめさだ。では何を狙って参入するのか。
第1に考えられるのが目下の収益柱である、スマホの液晶画面を照らすバックライトとの相乗効果だ。ミネベアのバックライトは1台400ドル以上の高価格
帯のスマホの7割に使われており、中価格帯を含めても世界最大級のシェアを持つ。世界的なスマホ市場の成長に合わせて同社製品の販売も伸び、最高益更新の
けん引役になっている。モジュール事業でも、自社製バックライトを核に他社の複数の部品を組み合わせる展開が考えられる。
売上高の大きさも魅力 だろう。立花証券の島田アナリストは新事業による売り上げ上乗せ額を「500億円は見込める」という。16年3月期の連結売上高見通しは前期比3割増の 6500億円。1500億円に上る前期比上乗せ額の多くがモジュール事業による伸びとみられる。控えめとはいえ利益が出るのであれば、中期経営計画で掲げ る「2020年に連結売上高1兆円」の目標達成のためのパーツとして考えられなくもない。
とはいえ、若干説得力に欠くことは否めない。そこで浮かび上がるのが「戦略的関係強化説」だ。
モジュール事業の取引先は大半が米スマホ大手とみられる。米スマホ大手とは? 「納入先との守秘義務がある」と貝沼由久社長の口は堅く、会社側からその名 が出ることは決してないが、業界の常識では米アップル社とされる。他社が引き受けたがらないモジュール事業を引き受け、「スマホに欠かせない部品メー カー」としての立場を固めて、アップルとの関係強化につなげるとの読み筋だ。
世界最大のスマホメーカーの韓国サムスン電子は長引く販売低迷から 完全に抜け出せていない。中国景気の減速で中国大手の小米(シャオミ)なども成長の勢いが鈍化。対するアップルは世界中で販売を伸ばすなど、1強状態にな りつつある。そんな環境下で、スマホの雄との関係を強化できればバックライトのさらなる販売拡大の可能性も生まれる。
市場もミネベアの戦略を評 価している。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石塚大シニアアナリストは6月、目標株価を2150円から2700円に引き上げた。「ミネベアのバック ライト事業はモジュール事業を始めることで優位性がさらに高まる」との指摘だ。足元の株価は、21日発表のアップルの7~9月期の業績見通しが市場予想を 下回る水準だったことでつられる形で下げ、28日には一時1778円と発表前から1割下落した水準にある。だが、「事業の優位性に変わりはなく投資判断も 変えない」(国内証券アナリスト)との見方が多い。
バックライトを核にした集中戦略の危険性を指摘する向きもある。スマホの画面は現在の液晶か ら、近い将来、消費電力や発色に優れる有機ELに切り替わるとみられているためだ。だが、世界のスマホ市場に詳しいMM総研の横田英明取締役は「有機EL はまだ価格が高いほか、生産できるメーカーも限られる。2020年ごろまでスマホの主力は液晶のままだ」と分析する。
ミネベアは31日に15年4~6月期連結決算を発表する。モジュール事業についての説明にも要注目だ。
売上高の大きさも魅力 だろう。立花証券の島田アナリストは新事業による売り上げ上乗せ額を「500億円は見込める」という。16年3月期の連結売上高見通しは前期比3割増の 6500億円。1500億円に上る前期比上乗せ額の多くがモジュール事業による伸びとみられる。控えめとはいえ利益が出るのであれば、中期経営計画で掲げ る「2020年に連結売上高1兆円」の目標達成のためのパーツとして考えられなくもない。
とはいえ、若干説得力に欠くことは否めない。そこで浮かび上がるのが「戦略的関係強化説」だ。
モジュール事業の取引先は大半が米スマホ大手とみられる。米スマホ大手とは? 「納入先との守秘義務がある」と貝沼由久社長の口は堅く、会社側からその名 が出ることは決してないが、業界の常識では米アップル社とされる。他社が引き受けたがらないモジュール事業を引き受け、「スマホに欠かせない部品メー カー」としての立場を固めて、アップルとの関係強化につなげるとの読み筋だ。
世界最大のスマホメーカーの韓国サムスン電子は長引く販売低迷から 完全に抜け出せていない。中国景気の減速で中国大手の小米(シャオミ)なども成長の勢いが鈍化。対するアップルは世界中で販売を伸ばすなど、1強状態にな りつつある。そんな環境下で、スマホの雄との関係を強化できればバックライトのさらなる販売拡大の可能性も生まれる。
市場もミネベアの戦略を評 価している。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石塚大シニアアナリストは6月、目標株価を2150円から2700円に引き上げた。「ミネベアのバック ライト事業はモジュール事業を始めることで優位性がさらに高まる」との指摘だ。足元の株価は、21日発表のアップルの7~9月期の業績見通しが市場予想を 下回る水準だったことでつられる形で下げ、28日には一時1778円と発表前から1割下落した水準にある。だが、「事業の優位性に変わりはなく投資判断も 変えない」(国内証券アナリスト)との見方が多い。
バックライトを核にした集中戦略の危険性を指摘する向きもある。スマホの画面は現在の液晶か ら、近い将来、消費電力や発色に優れる有機ELに切り替わるとみられているためだ。だが、世界のスマホ市場に詳しいMM総研の横田英明取締役は「有機EL はまだ価格が高いほか、生産できるメーカーも限られる。2020年ごろまでスマホの主力は液晶のままだ」と分析する。
ミネベアは31日に15年4~6月期連結決算を発表する。モジュール事業についての説明にも要注目だ。
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