joled ishikawa new2015ソニーとパナソニックの有機ELパネル事業を統合したJOLED(ジェイオーレッド)は来春、石川県川北町に研究開発拠点を新設する。同社株主のジャパンディスプレイ(JDI)の石川工場内でパネルの量産技術を確立する。試験ラインなどの整備で投資額は200億円程度。タブレット端末やノートパソコン向けパネルの量産を急ぎ、先行する韓国勢に対抗する。
 有機ELパネルは高い輝度と鮮やかな色の再現力が特徴。薄型・軽量で省電力にもつながるためスマートフォン(スマホ)向けで普及し、韓国サムスン電子が世界シェアの大半を握る。事業統合会社のJOLEDはタブレット、パソコンで液晶パネルの一部を代替する需要を取り込みながら市場に参入する。
 神奈川県厚木市と京都市に持つ開発拠点から合計で約50人の研究員が異動し、フルHDの高精細有機ELパネルの量産技術の確立を目指す。

2016年春から試作品を生産し、16年内にサンプル品を出荷。受注動向を見極め、17年夏ごろには量産のための設備投資を決める計画だ。早ければ18年にも量産を始める。
 試験用の生産設備のほか、有機材料の成分分析やミクロン単位で塗布の誤差を測定する解析装置を導入する。生産設備には4.5世代(730ミリメートル×920ミリメートル)と呼ぶガラス基板を使い、JDIが持つ既存設備も活用しながら研究を進める。
  JOLEDは光源となる有機材料をプリンターのように塗布する「印刷方式」と呼ぶ生産手法を採用する。サムスンなどの既存の方式と比べて製造コストが大幅 に安い半面、数マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル単位の精度調整などが壁となり、実用化が難しかった。母体会社のソニー、パナソニックで蓄積 した技術をもとに研究開発を加速する。
 タブレット端末やノートパソコンなど10~20型の中型パネル市場を狙う。スマホ向けはJDIが手掛ける 液晶パネルの競争力が高いため、中型に注力して顧客をすみ分ける。既存の生産方式は中型以上の高精細パネルを効率よく生産することが難しく、印刷方式での 量産技術を確立して中型市場で先行したい考えだ。JOLEDはソニーとパナソニックの有機EL事業が母体。両社とJDI、産業革新機構が出資して15年1 月に発足した。