鴻海がシャープの液晶事業の獲得に執念を燃やすのは、「米アップルからスマートフォン向けディスプレー再受注が固まりつつあり、これを確実にしたいため」(関係者)とされる。シャープは老朽設備と生産工程の問題で米アップルなどからの受注取りこぼしが目立つが、それでも鴻海グループの液晶事業に比べて、一日の長がある。小型高精細パネルは一定の評価を得ており、次期アイフォーンで見込まれる小型4インチサイズはシャープが受注したようだ。
鴻海とシャープは12年に資本提携で合意したが、合意後にシャープ株価が急落して、落差が大きすぎたため台湾当局がシャープへの出資を認めず、出資自体が見送られた経緯がある。ただ、営業赤字だったシャープのテレビ向け大型液晶工場(堺市堺区)は、先行して鴻海との共同運営に切り替わり、鴻海が顧客開拓を積極的に進めるなどで営業黒字化した。
国内電機メーカーにとっては、世界最大手の鴻海とシャープの協業は脅威になる可能性が高い。とりわけ、中小型液晶最大手で機構案ではシャープの液晶事業との統合が模索されるジャパンディスプレイは今後、厳しい競争にさらされる可能性がある。鴻海は米アップルのスマホ組み立てなどで関係が深い上、多くの中国スマホメーカーの組み立ても手がけ、液晶パネルも納めている。鴻海グループの液晶事業はテレビ向けが多いが、昨今は中小型液晶に注力しており、大型投資で工場建設も進めている。
シャープ本体に約3000億円出資し、主力行に事実上の債権放棄を含む3000億円以上の金融支援を求め、将来的にシャープ事業を他社と統合する革新機構の案もまだ消えていない。高橋社長は「公平性と透明性を持って審議をする」としている。 債権放棄を含む機構案の受け入れは、主力行が「株主代表訴訟」で訴えられる可能性がある。ある主力行幹部は鴻海優位を受け、「良い知らせだ」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。Move to full article
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