もともとシャープは経営理念の冒頭で「いたずらに規模のみを追わず…」と記す通り「身の丈経営」が信条だった。  
変化したのは、液晶事業の躍進で家電の勝ち組に位置付けられてからだ。ブラウン管を自社生産できなかったシャープは、かつてテレビ事業で存在感が薄かったが、電卓の表示装置として世界で初めて実用化した液晶の高画質化に成功したことで成長軌道に乗った。
昭和60年ごろには数十億円規模だった液晶事業の売上高は伸び続け、平成19年3月期には1兆円を超えるまで成長。このとき、ついに全体の売上高が3兆円を超えた。19年3月、液晶事業の拡大路線を推進した町田勝彦氏は片山幹雄氏(現日本電産副会長)に社長を引き継ぐことを発表。
このタイミングの交代について「売上高が3兆円を超える見通しになるなど区切りがついた」と力を込めた。


同時に、経営トップの判断に意見しない上意下達の強すぎる企業風土が経営危機の背景にあると判断。過去にあったものを「けったいな文化」として改革に着手した。社員が指示を待たずに自分で判断する意識改革や国内の工場や営業所訪問での社員とのコミュニケーションに熱を入れ、フラットな職場づくりに注力した。
関係者は「社員がやる気を出せば結果が出ると奮起を促し続けた。ボトムアップに期待し過ぎて、経営トップの本来の仕事である経営判断を置き去りにした結果、構造改革が遅れた」と指摘する。
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