apple foldable OLED exampleAppleが有機ELパネルを採用する理由としては折り曲げ構造を採用できることが必須と考えます。
なぜならば画質や薄さといった点ではLTPS液晶から差別化できないからです。
画質は今のSamsungのスマートフォンGalaxyを手に取って見てください。液晶との差はほとんど感じられません。
では厚さはどうでしょうか? IHS Technologyの情報によりますと、5インチクラスでLTPSは約1.6mm、リジッドの有機ELで約1.3mm、折り曲げ構造の有機ELで約1.0mmです。
確かに有機ELのほうがバックライトが不要なため薄いですが、敢えてリスクを取って新技術を採用するほどの決定打にはならないでしょう。
ということから考えると折り曲げ構造を採用できるということが採用の理由と思われます。

では、どんな形状のスマートフォンが出来上がるのでしょうか?

いままでディスプレイメーカーが訴求のために用意した例を並べてみます。折り曲げたり広げたりして手帳のような使い勝手を提案しています。
多分Appleもこの形状をもとにもっとスマートなデザインに仕上げると思います。



では技術の見通しはどうなのでしょうか? 折り畳み可能な有機ELパネルは、技術的なハードルがまだ高いというのが一般的な見方です。
当然ながらコストを見積もれるような段階ではありません。コスト計算には歩留という0%から100%まで振れる係数の算定が必要です。
ガラス基板で形成するリジッドの有機ELはかなり歩留が良くなっているようですが、その数字から折り曲げ構造の有機ELの歩留を予測することは現時点では誰もできないはずです。
想像ですが、Samsungグループがかなり研究を積んでAppleに売り込みそれに乗っている段階だと思います。

一方マスコミ報道は加熱しています。下記に一部列記します。
台 湾の調査会社DIGITIMES社の調査部門であるDIGITIMES Researchは2016年3月8日付レポートで、Apple社の台湾系サプライチェーンの話として、Apple社は今のところ、初の有機EL搭載 iPhoneのサイズを5.8型で計画しているとした。さらに、発売は2018年で初年の出荷台数は5000万台、ディスプレーの供給業者は韓国 Samsung Display社、韓国LG Display社、ジャパンディスプレイの3社体制で、第1サプライヤーはSamsung Display社になるとの見方を伝えている。
韓国のIT情報専門メディア『ET News』(2016年3月20日付)。ET Newsはまず韓国業界筋の話として、Samsung Display社が2016年分として、単月6万枚の有機ELパネルを供給することでApple社と契約を結んだと報じるとともに、Apple社への有機 ELパネル供給で第1サプライヤーになったとし、フレキシブル有機ELパネルを搭載する初のiPhoneに、Samsung Display社が少なくとも5割、最大で8割を供給するものと韓国の業界が見ているとした。
ただし実際の華々しい報道とは裏腹に、着実に技術開発・量産確立を進めていく必要があります。

一連の材料の選定を行って製品の設計を決定する、量産工程や工程条件を決める、といったステップを終えたのちにかなりの数量を試作して歩留を手にしなければなりません。 実績に裏づく証明をSamsungはAppleにこれからしていくのでしょう。
そのリスクを取る姿勢には感服しますが、今はまだ最初の段階と思います。
本当にAppleの要求するようなレベルの有機ELは完成するのでしょうか? ビジネスの判断も含んだかなりの変動要素を未だに含んでいると思います。
幸いなのはスマートフォンの信頼性要求はテレビなどと比べて緩るいことですね。
しかしiPhoneの電池の持ちが使用時間とともに急速に低下することに嫌気がさして手放した経験から言いますと、Appleが新規技術の採用やデザイン優先の妥協でユーザーをがっかりさせないでほしいものです。

一方、Apple社は液晶のバリューチェーンにも多額の投資を行っています。
自ら築き上げようとしているバリューチェーンを壊してまで、Samsungグループが全面展開している有機ELに賭けるかどうかは、いささか疑わしいと思います。(参考:「アップルたたきつぶせ」手段選ばぬサムスン 韓国に負けた日本企業)
Apple社のiPhoneへのOLED採用可能性だけをもって「液晶は終わり」と結論付けるのは全くの早計だと思います。

[参考] 有機EL(OLED)量産工場・投資予定一覧 (OLED Production Plant Investment Summary)