台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と傘下のシャープはスマートフォン(スマホ)向け有機ELパネルを2019年にも中国で生産する検討を始めた。中国では米アップルのスマホ組み立て工場が集積し現地メーカーも急成長している。政府の支援などで投資負担も抑えられると判断した。次世代パネルを現地生産して競争力を確保しシャープの経営再建につなげる。

 スマホの表示装置は液晶パネルが主流だが、鮮やかな発色が特徴の有機ELパネルをアップルが17年にもスマホ「iPhone」に採用する方針だ。鴻海とシャープは中国生産により有機ELパネルで先行する韓国サムスン電子の追撃を狙う。



 シャープは製造設備の取引先に中国生産の意向を伝えた。最終組み立てや検査工程に加え、発光する有機材料を基板に付着させる重要工程も手掛けることを検討。沿海部を中心に用地を探すもようだ。進出する地方政府から補助金や税制優遇などの支援を見込む。段階的に生産量を増やすが、1000億円以上の投資が必要とみられる。

 シャープは総額2000億円を投じ有機ELパネルの量産体制を整える計画を公表。堺工場(堺市)に試作ラインをつくるが、当初は国内を予定した量産のラインは中国が有利と判断。鴻海傘下の液晶パネル大手、台湾・群創光電の中国にある工場の活用も検討する。

 有機ELパネルはシャープが研究開発しており中国生産で技術流出の懸念もある。同パネルは効率良く量産することが難しく、安定供給できる技術の確立が課題となる。