戴社長は、鴻海との協業による調達・物流のコストダウン効果を主な理由に挙げる。だが、地道な改革だけで業績が上向いたわけではない。ライバル企業である韓国のサムスン電子がシャープなど3社を相手に、4億2900万ドル(約490億円)以上の損害賠償とパネル供給再開を求めて起こした仲裁申し立て。それを読むとシャープのV字回復に向けた鴻海の強力な肩入れが浮かぶ。
昨年11月29日に開かれたSDPとサムスンの幹部らが集まった会議で、SDP側が「(鴻海の)郭台銘董事長は世界的にブランド力を高める考えで、当社のパネルは全て鴻海・シャープに渡すことが決まった」などと説明。12月末でサムスン向けのパネル供給を全て止めると一方的に通告したのだ。


 仲裁申立書には、鴻海がSDPのパネルを市場価格よりも5割高い価格で購入すると約束したといった趣旨のことも書かれている。  調査会社によると40インチのパネル市場価格は2016年12月時点で140~155ドル。60、70インチの大型サイズは400ドル前後だ。「市場価格の5割増し」がそのまま利益となれば、単純計算でSDPには年500億円以上の利益の押し上げ効果が見込める。
画像の上に書かれた「買一送一」の文字。これは「70インチのテレビを購入すれば、60インチのテレビを1台無料で贈呈するサービス」を意味している。こうしたおまけ商法は中国では一般的だが、アクオスのような高額商品で展開することは極めて珍しい。  異例のバラマキ戦略に打って出た背景には、「シャープのテレビ販売台数を2018年度に現在の約2倍の1000万台に引き上げる」という郭董事長の目標がある。
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