鴻海精密工業傘下の液晶パネル大手、群創光電(イノラックス)の王志超董事長は20日、完成品まで一貫生産する「新イノラックスモデル」で6月よりテレビを少量出荷しており、2019年に出荷台数1,000万台を目指すと表明した。戴正呉シャープ社長は20年の東京五輪を念頭に、将来的にテレビ販売目標2,000万台へ4倍増を視野に入れており、イノラックスが協力すると予想される。21日付経済日報などが報じた。

蕭志弘総経理は、6月よりテレビ出荷を開始しており、今年は100万台の見込みで、来年は500万~600万台まで増やすと語った。テレビの出荷拡大で、19年には売上高が倍増すると予測した。

 王董事長は、17年をテレビ完成品元年と位置付け、イノラックスは単なるパネルメーカーからスマートマニュファクチャリングのプラットフォームになると表明した。イノラックスのパネル生産能力は増やさずに、シャープや堺ディスプレイプロダクト(SDP)などと協力し合うと語った。



 イノラックスのテレビ生産参入は、鴻海科技集団(フォックスコン)のリソース活用が前提にある。SDPの広州工場(中国広東省)に加え、シャープが米国で第10.5世代パネル工場を建設する可能性があり、イノラックスのテレビ用大型パネル調達に懸念はない。

 また、シャープに限らず、鴻海グループが受注したブランドの受託生産も可能だ。

 従来のイノラックスモデルでは液晶モニター完成品を生産しており、1カ月当たりの出荷台数は最高で100万台だった。新イノラックスモデルは中国の労働力に頼るのでなく、無人工場などスマートマニュファクチャリングと垂直統合サプライチェーンで顧客の忠誠度を高め、パネル景気の変動によるリスクを低減する狙いもありそうだ。

 王董事長は、今年第1四半期の粗利益率、営業利益率、純利益率はいずれも過去最高で、世界で唯一、負債を持たないパネルメーカーだと強調した。昨年上半期は2月に発生した台湾南部地震の影響を受けたが、下半期からパネル景気は上向き、55、65、75インチパネル需要により平均サイズが大型化しており、今年下半期に価格暴落の懸念はないと予測した。来年は各社の10.5世代工場が稼働するものの、パネル大型化から市況をそれほど悲観していないと語った。

 イノラックスの次世代ディスプレイ技術として丁景隆・執行副総経理は、遅くとも5年以内にマイクロLED(発光ダイオード)ディスプレイを発表する見通しで、これに先駆けミニLEDディスプレイを開発すると述べた。

 丁副総経理は、ミニLEDも曲面・異形状に適用でき、パネル1枚に数十~数万個を敷き詰めてLEDバックライトとして、高画質技術HDR(ハイダイナミックレンジ)を実現し、画質は有機EL(OLED)を上回ると説明した。早ければ1~2年後にも量産、出荷する見込みで、3~5年以内にはミニLEDを使った新製品が登場すると予測した。当初は車載用への応用が予想されるが、車載用は認証に時間がかかると指摘。TFT-LCD(薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)との価格差は20%以下と予想した。