市場観測によると、アップルは2018年末~19年に発売する予定のAR(拡張現実)メガネの生産を広達電脳(クアンタ・コンピュータ)に委託する。クアンタは非公開で、梁次震副董事長が率いる1,000人規模の研究開発(R&D)チームを組織した。
アップルの参入でAR産業は大きな盛り上がりを見せ、AR市場の規模は22年に96億米ドルと、昨年の10倍に拡大する見通しで、台湾メーカーの新たな商機になることが期待されている。20日付経済日報などが報じた。

市場観測に対しクアンタ広報は、特定の顧客に関してはノーコメントとした。ただ、クアンタは近年AR分野に注力しており、R&Dチームがあるのは確かで、クラウドコンピューティングのソフト・ハードウエアまでカバーしていると説明した。



 クアンタの林百里(バリー・ラム)董事長は先週、2年前よりARメガネの研究開発に取り組んでいると話した。クアンタは、マイクロソフト(MS)の開発者向け「ホロレンズ」は3,000米ドルと高過ぎ、ARメガネが普及するのは1,000米ドル以下になってからとの見方だ。

 クアンタは今年第1~3四半期のR&D費用が92億台湾元(約340億円)と前年同期より10億元多い。主にウエアラブル(装着型)端末、クラウドコンピューティングのソリューション開発向けだ。今後、本業のノートPC以外に、AR、VR(仮想現実)、ウエアラブル端末、ビックデータに照準を定め、早ければ2年以内に顧客に製品を提供する見通しだ。また、アップルのARメガネ受注が実現すれば、クアンタはノートPC受託生産の粗利益率の低さをカバーすることができる。

 金属筐体最大手、可成科技(キャッチャー・テクノロジー)の洪水樹董事長は先日、AR、VRはハイテク業界の注目分野で、キャッチャーもこの分野で顧客と提携しており、来年にも製品が発売される可能性があると話した。

 キャッチャーは長年アップルと提携関係にあり、スマートフォン「iPhone」、ノートPC「MacBook」に金属筐体を供給している。アップルのARメガネについてキャッチャーはノーコメントだが、MacBookや腕時計型ウエアラブル端末「アップルウオッチ」を受託生産しているクアンタとともに主要サプライヤーを担うと見込まれている。

 キャッチャーは年初来の設備投資が104億元と3年ぶりに100億元の大台に乗せた。証券会社は、アップルのARメガネ発表が早まるなら、キャッチャーは来年の設備投資が増えると予想した。

 市場調査会社の予想によると、アップル、グーグルなどの参入で、AR市場の生産額は22年に96億米ドル、16~22年の年平均成長率(CAGR)は47%に上る見通しだ。

 アップルは今年6月に開発者向けAR開発キット「ARKit」を公開しており、既にARゲームなどのARアプリが開発されている。「ARKit」は将来、世界最大のARプラットフォームになると予想される。

 また、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は先日、今後ARアプリ商機は急増すると述べた。アップルのARメガネ投入を見越しての発言とみられている。