jpg中小型液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)の能美工場(能美市)は27日、生産を停止した。稼働開始から5年半にわたり、スマートフォン向け液晶パネルを手掛けてきた同工場の製造はJDIの経営再建に伴い、一つの区切りを迎えた。工場を引き継ぐJDI関連会社のJOLED(ジェイオーレッド)は2019年末をめどに次世代の有機ELパネルの量産を目指す。

 「出荷が終了しても特に何とも思わない。今後は、なるようになるだろう」。27日、能美工場で働く30代男性従業員は淡々と話した。工場内の雰囲気は普段と変わらず、多くの同僚らは節目の日を冷静に受け止めていたという。



 同工場で4年程度、生産業務に携わり、停止後は県外の拠点に異動するという40代男性従業員は「年明け以降も機械の撤収作業が続く。しばらくは工場内に人がいる状態だ」と話した。

 JDIによると、能美工場の従業員数は7月1日時点で268人。生産停止後、半数以上は白山工場(白山市)を中心に国内の他工場に移り、希望退職に応じる従業員を除くと、雇用はほぼ維持される。JOLEDが再活用する生産設備の維持管理を担う従業員は引き続き残るという。

 JDIの広報担当者は「能美工場の再稼働を含めJDIの構造改革は計画通りに進んでいる」と話した。

 JOLEDは来年3月末までに約1千億円の第三者割当増資を実施する計画だ。自動車部品大手デンソー(愛知県刈谷市)や、JOLED設立母体で株主のソニーとパナソニックなどが出資を検討しており、調達金のうち約700億円を能美工場の投資に充てる。広報担当者は「資金のめどをつけ、できるだけ早く有機ELの生産設備の発注手続きに入りたい」と述べた。

 井出敏朗能美市長は能美工場の生産停止について「残念だが、雇用が確保されると聞き安堵(あんど)している。再稼働すれば世界最高技術の工場になることを期待しており、末永く続いてほしい」と期待を込めた。

 谷本正憲知事は能美工場について「次の飛躍に向けて階段の踊り場にいるイメージだ」との認識を示した。その上で「1カ月でも2カ月でも早く事業を再開してほしい」と述べた。

 JDI能美工場は東芝モバイルディスプレイの液晶パネル事業を引き継ぎ、12年6月に稼働した。