BOE 投資 FE001-PN1-2中国国有のパネル最大手、京東方科技集団(BOE)は8日、重慶市に有機ELパネル、湖北省武漢市に大型液晶パネルの新工場などを建設すると発表した。総投資額は965億元(約1兆6千億円)。BOEよりも地元政府の方が多額の資金を投じる仕組み。経済成長の「量から質への転換」をめざす中国政府の方針を追い風に新鋭工場の稼働で韓国勢を追う。

  重慶市に建設するのは、スマートフォン(スマホ)など向けの有機ELパネルの生産拠点。「第6世代」(1500ミリメートル×1850ミリ)と呼ばれる基板を採用する計画で、月産能力は4万8千枚。工期は2年4カ月で、2020年末までの稼働をめざす。国内で4カ所目の有機ELパネル工場となる見通し。

[参考] 中国-液晶・有機EL工場+ガラス工場、投資・計画状況一覧



 中国のスマホ出荷が17年に減少に転じ、中国メーカーの多くはスマホの形状の自由度が高まる有機ELパネルの採用で消費者への訴求力を上げようとしている。スマホ以外にも自動車やノートパソコンに用途が広がり、国内需要が増えると判断した。米アップルへの納入を狙っているとの観測も出ている。

武漢市には液晶パネルの生産拠点を新設する。ガラス基板のサイズが世界最大の「10.5世代」(2940ミリ×3370ミリ)と呼ばれる最新鋭の工場で、65インチや75インチの大型テレビ向けに最適で高精細の4Kや8Kに対応する。

 10.5世代は韓国LGディスプレーや中国の華星光電(CSOT)などが準備を進めているが、BOEは17年末に安徽省合肥市で世界で初めて工場を稼働した。大型テレビ販売の増加で需要が伸びると判断した。武漢の新工場の月産能力は12万枚。工期は2年間で、20年の稼働をめざす。

 重慶と武漢のほか、40億元を投じて江蘇省蘇州市にある液晶テレビや液晶モニターなどの組み立て工場の生産能力も引き上げる。具体的には液晶モニターなどの年産能力を1230万台から2千万台まで増やすという。

 BOEは習近平(シー・ジンピン)政権が掲げる量から質への成長モデルの転換と歩調を合わせて事業を伸ばす。重慶の新工場建設の発表文書では「中国政府の重点産業を育成する政策と適合している」ことなどを強調。重慶が進めるインフラ整備と合致するとも言及している。

 政府の後押しを受けた「国策」事業であることは資金面からも見て取れる。2つの新工場はそれぞれ、BOEと地元政府などが共同出資で工場の運営会社を設立。新会社が金融機関から借り入れする分を含め、重慶の場合、総投資額465億元のうちBOEが100億元を負担するのに対し、重慶市は160億元を負う。武漢の新工場でも総投資額460億元のうち、BOEが責任を負うのは60億元にすぎないが、武漢市政府などは200億元を負担する。

 重慶では同市の優遇税制も活用。BOEは自社のリスクを抑えながら生産能力拡大を実現する格好で、液晶パネルに詳しいアナリストは「BOEの負担比率はたいてい総投資額の15%ぐらいにすぎない」と指摘する。

 中国メディアによると、福建省福州市の液晶パネル工場を巡っても、地元政府がBOEに対して60億元規模の融資の返済を免除した。1月には政策金融機関の中国国家開発銀行との提携を発表しており、国家開発銀行が新工場建設時などの資金調達を支援する。

 BOEは17年12月期の純利益が16年12月期実績の4倍に相当する75億元から78億元に増える見込み。これまで利益水準は低かったが、高付加価値品強化の成果が出てきたとしている。