全国発明表彰(公益社団法人発明協会主催、朝日新聞社など後援)の今年度の受賞者が決まった。最優秀の恩賜(おんし)発明賞には、薄くて発色のよい有機ELディスプレーの発光材料を開発した技術者が選ばれた。表彰式は6月12日に東京都内で開かれる。
■恩賜発明賞 青色発光材がフルカラー実現 有機EL素子および有機発光媒体の発明 松浦正英、舟橋正和(出光興産)、福岡賢一(出光電子材料韓国)=敬称略
発色がきれいで厚さも薄い新世代のディスプレーとして広がる有機EL素子で、フルカラーを実現する青色材料を開発した。特に50インチを超える大型テレビでは、出光興産製材料の世界シェアは100%だ。
■恩賜発明賞 青色発光材がフルカラー実現 有機EL素子および有機発光媒体の発明 松浦正英、舟橋正和(出光興産)、福岡賢一(出光電子材料韓国)=敬称略
発色がきれいで厚さも薄い新世代のディスプレーとして広がる有機EL素子で、フルカラーを実現する青色材料を開発した。特に50インチを超える大型テレビでは、出光興産製材料の世界シェアは100%だ。
有機ELは、有機物の材料で光るLEDの一種で、素子そのものの明るさを自在に変えられる。そのためバックライトを液晶で遮ることで光量を調整する液晶ディスプレーよりも明暗がはっきり再現でき、消費電力も少ない。また、点で光る通常のLEDと違って平面全体が光るため、天井の広い範囲が光る照明もつくれる。今後、需要が大きく伸びると予測されている。
研究は1980年代から世界で本格化し、87年に米コダックが初めて実用的な有機ELを開発した。しかし、波長が短くて高いエネルギーが必要な青色を実現するのは有機ELでも難しかった。有機材料は変質して暗くなりやすく、寿命の短さが常に課題だった。
石油危機をきっかけに研究の多角化を進めていた出光も、85年から研究を始めていた。研究リーダーだった細川地潮さん(故人)を中心に、まず水色の実用化に世界で初めて成功。さらに青く光る材料探しが続いた。材料を研究していた舟橋正和さんは、六つの炭素原子が六角形に結合しているベンゼン環のくっつき方などを少しずつ変えて実験を行った。その材料を松浦正英さんと福岡賢一さんが素子にして寿命が長い組み合わせを探した。
突破口は、電気からエネルギーを受け取る材料と、光を出す材料を別々にしたことだった。役割を分けたことで、真っ青に光り、寿命も長い実用的な有機ELにめどがついた。
韓国のLG電子が、難しかった大型ディスプレーの量産化にも成功。日本のテレビにも使われるようになった。米アップルが昨年発売したスマートフォン「iPhoneX(アイフォーンテン)」も有機ELを採用するなど、高品位なディスプレーの代名詞になりつつある。
業界団体によると、大型テレビパネルでの有機ELの年間販売高は現在1千億円規模で、2020年には3倍になる見通しだ。松浦さんらは「消費電力がさらに少なく、高品質な材料を開発して、有機ELを広く普及させたい」と意気込んでいる。
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