先日あるところで、東証一部上場の某大企業の社長と同席しました。その時、その社長からこんな質問をされて、びっくりさせられました。「利益が出ていないというだけで、日本企業の生産性は低いと言い切っていいものでしょうか」。
 確かに、この連載の過去記事にも「生産性は分子が利益だから」というコメントが何度も寄せられています。
既存の商品の値段をただ単に上げるだけでは、消費者の納得が得られず、持続的に生産性を向上することはできません。一方で、より付加価値の高い、新しい商品を開発することができれば、より高い価格で販売することが可能になります。


私は、最近の政府の委員会の議論や、マスコミの報道を見るにつれ、ある危惧を抱いています。それは、日本の技術力を持ってすればAIやロボットなどの分野を伸ばし、これからの人口減少下でも十分に戦っていけるという論調が多いことです。
 日本ではイノベーションという英語が「技術革新」と訳されることが多いためか、イノベーションと技術力は切っても切り離せないものだと考えられています。 事実、政府予算も技術革新ならば「何でもOK」というスタンスで、最先端技術と言えば何でも通るような風潮があるように感じます。
しかし、「何が生産性の向上をもたらすのか」を学問的に分析した結果によると、日本で思われているのとは違う要因が重要だということが明らかにされています。 その英国政府の分析によると、技術革新はイノベーションを起こし、生産性向上をもたらす最重要の要素ではありません。
いちばん重要なのは、実は、Entrepreneurismです。 「Entrepreneur」は、一般的に起業家と訳します。しかし経済学では、より広い意味合いが含まれています。「イノベーションの担い手として創造性と決断力を持って事業を創始し運営する個人事業家」という説明を見たことがありますが、これも英語のニュアンスと微妙に違います。
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