img1_file5b5edd0fcae7e文字や絵画は、歴史や現代の文化などを伝える手段として受け継がれていく。印刷物が減る一方、デジタルメディアの普及に伴い情報量は増加している。企業の広告やロゴなどに使われる文字も差別化され、多様性が求められる。文化財や国宝などを高解像度で映像化したり、高精度な複製を作ってビジネスにつなげる動きも活発化している。

大日本印刷専務執行役員の北島元治は、書体は「文化そのもの」と力を込める。同社は明治時代にオリジナル書体「秀英体」の開発に着手。同社の印刷物に使われていたが、2009年以降はフォントメーカー向けに販売。書籍や辞典をはじめ、パソコンや映像テロップなどに幅広く活用されている。印刷市場が縮小し「紙媒体は減っているが、情報量は増えている」(北島)ことから、書体の需要増を期待する。



政府は文化芸術資産がもたらす経済効果「文化GDP」を25年までに15年比約2倍の18兆円とする目標を掲げる。同社も京都の有形・無形の文化遺産を高精細な4K映像で保存する取り組みなどを進める。北島は集めたデータについて「国内外での公開機会を増やして、収益化していく」と力を込める。

同社は17年4月にデジタルアーカイブ推進コンソーシアム(青柳正規会長=東京大学名誉教授)を設立。富士フイルムや富士通、ヤフーなど20社以上が参画している。地域創生や教育、観光などさまざまな分野でデジタルアーカイブを活用する。北島は同事業は「応用範囲が広く、数百億円規模を目指したい」としている。

競合の凸版印刷も積極的に事業を拡大している。6月には約20億円を投じ、地方創生や観光に関する新規ビジネスの共創拠点を東京・丸の内に新設するなど攻勢をかけている。大日本印刷同様、凸版印刷もデジタルデータなどの集約に向けて産学官によるコンソーシアムの立ち上げも視野に入れるなど、火花を散らす。