業績低下に見舞われている華碩電脳(ASUS)で、スマートフォンからの撤退論が浮上している。携帯電話事業は中国勢の攻勢の前に損益均衡の目標時期を先送りする状況が続いており、劣勢を挽回できるめどは立っていない。携帯事業の位置付けと存廃は同社の将来像を左右する問題で、事業の今後の推移とそれに伴う判断が注目される。22日付蘋果日報などが報じた。

消息筋によると、撤退論の主唱者は施崇棠(ジョニー・シー、66)董事長の後継者候補と目される徐世昌(テッド・シュー)副董事長兼策略長で、携帯事業には同社のリソースのうち最大の30%を投入しているものの、売上高への貢献度がマザーボードと同じ15%にすぎないことに強い不満を抱いているという。そのため、携帯事業は今年第4四半期に損益均衡を達成できなければ撤収し、社内組織の再編を行う方針を表明したと伝えられている。これに先立ち、沈振来(ジェリー・シェン)執行長が8月10日の業績説明会で「継承と転換の推進を加速する」と発言しており、同社の「事業転換」の可能性に俄然(がぜん)注目が集まった。



 同社は今年第2四半期、携帯事業の黒字化遅延も一因として前期比44%減、前年同期比34%減の大幅減益に見舞われている。純利益は13億3,200万台湾元(約48億円)と、和碩聯合科技(ペガトロン)を分社化した2010年以降で最低だった。米中貿易摩擦で人民元などの通貨が下落し、為替差損の低減が重要目標になっている状況の下、携帯事業黒字化の目標時期は当初の今年第3四半期から第4四半期に先送りした。

 ASUS広報は21日、携帯事業からの撤退観測を否定。引き続き事業の調整を行い、利益計上を目指すと説明した。

 施董事長は今年6月の株主総会では、携帯電話はスマート新時代の重要な端末機器だとして事業継続の意思を示している。中国、米国などの競争が激しい市場は回避し、台湾、インド、東南アジア、中南米などの市場に重点製品を投入するモデルで生き残りを狙う戦略で、ブラジル市場で先週「ZenFone5」シリーズを発表したばかりだ。

 台湾ブランドのスマホは、宏達国際電子(HTC)の失敗に続いてASUSも先行きが厳しくなった感がある。

 台湾ブランドは、拠って立つ内需市場が小さい決定的な不利さを抱えている。台湾市場の携帯電話の年間販売台数は700万~800万台で、中国の4億台とは比較にならない。今や携帯電話の世界市場で、上位5位ブランドに▽華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)▽北京小米科技(小米、シャオミ)▽広東欧珀移動通信(OPPO、オッポ)──の中国3社がランクインした一方、台湾ブランドは既にランク外となって久しい。

 沈執行長はアップル、サムスン電子と中国3社から成る5大ブランドに維沃移動通信(vivo、ビーボ)を加えた6社に次ぐ、7位ブランドとして生存を図る考えを表明しているが、携帯電話の上半期出荷台数は1,000万台足らずと、年初時点の目標1,200万台に届かなかったもようで意気が上がらない。

 この2年は韓国人気俳優、コン・ユを高額の契約料でイメージキャラクターに起用しているものの、販売増には結び付いていない。