sony bravia_AF94K液晶テレビ「ZF9」とともにIFAでソニーが公開したBRAVIA Masterシリーズのもう一つの新製品が、4K有機ELテレビのフラグシップ「AF9」である。

映像エンジンはZF9と同様にX1 Ultimateを積み、アコースティックサーフェスを新たにセンタースピーカーモードに対応させるなど、映像と音響の両方で進化を遂げたというのがソニーの主張。そのクオリティをブースでじっくり検証した。

日本だけでなく欧州でも、大型テレビにおける4K有機ELテレビの構成比は著しく伸長しており、AV機器のなかでも注目度の高さは他の追随を許さない。ZF9のレポートでも紹介した通り、ソニーは4K液晶テレビにもフラグシップ機を投入して旺盛な開発姿勢を示しているが、その一方で4K有機ELテレビの開発スピードを緩めたわけではなく、トップエンドのAF9を完成させた。遠くない時期に日本国内仕様の価格や発売時期も明らかにされるはずだが、まずは欧州向けモデルの映像で進化の内容を確認してみよう。



新しい映像プロセッサー「X1 Ultimate」は処理速度を2倍に上げることでリアルタイムの演算量を高め、オブジェクト型超解像の導入やコントラスト改善技術「HDRリマスター」の完成度も高めるなど、複数の信号処理を同時に高速でこなす能力を獲得した。
特にオブジェクト型超解像は被写体映像の特徴を詳細に検出して同じような特徴を持つエリアをグルーピングする技術であり、それぞれのグループに対して超解像やノイズリダクションの処理を最適化し、誤検出による違和感の発生を大幅に減らすことを狙っている。

今年のIFAでは8Kディスプレイも大きな話題になっているが、解像度を上げただけで遠近感を引き出せるわけではないことを思い知らされるような映像が多く、なんのための8Kなのかよくわからない展示にも遭遇する。しかも、それはけっして極端な例ではない。ディスプレイの性能を判断する指標が相変わらず解像度偏重になる傾向は、特に海外では依然として強く、個々の被写体一つ一つの階調とコントラストを忠実に再現することで立体感や遠近感を表現するというアプローチはむしろ少数派と言っていい。

そんな環境だからこそ、AF9が見せるあざとさのない立体感豊かな映像はかえって目立っているように感じられた。