初めて中国を訪れた18年前の夏、一人リュックを背負って上海と近隣の蘇州を歩いた。歩行者を蹴散らし横断歩道に進入してくる自動車に驚き、「けがなく無事に帰国したい」と国内の友人宛てに手紙を書いたことを覚えている。中国が経済大国となることを決定付けた世界貿易機関(WTO)加盟の1年前だった。  

その後何度も訪れている上海の目抜き通りで先日、交差点が完全に「歩行者優先」となっていることに気付いた。グッチなどの高級ブランドショップが並ぶ通りには、上着をまくりあげた“腹出し納涼スタイル”の男性がまるっきり見当たらない。普段暮らす首都の北京でも、まだこうはいかない。



 ♪あの故郷(ふるさと)へ 帰ろかな 帰ろかな…。当時、上海商城劇院の最後列からみた雑技団のステージは、団員が日本語で歌いながら曲芸をするパフォーマンスが印象的だった。
18年ぶりに見た雑技はアクロバチックな芸がより洗練されていたが、「北国の春」は当然聞けなかった。“お得意さま”だったはずの日本人観客は今や1割もいない。

 日々向き合っている中国という国は決して固定化された存在ではなく、常に変化し移ろい続けている。「将来必ずこの国で仕事をするはずだ」という予感を18年前に抱いた地で、そんな思いを強くした。